いわき地域学會の市民講座は5月から翌年2月まで年10回開かれる。この2年はコロナ禍で会場のいわき市文化センターが臨時休館になるなど、中止や延期が相次いだ。やっと最近、元に戻りつつある。
11月は自然部会の阿武隈山地研究発表会を兼ねる。去年(2020年)に続いて、鳥海陽太郎幹事が「いわきの自然環境『天然記念物』を見る~『差塩湿原』『内倉湿原』を巡り現況を知る」と題して話した。
今、いわきの自然環境がどうなっているのか――。最新情報がわかるという点では、特に興味深い講座でもある。
鳥海さんのこれまでの講演からいろんなことを学んだ。平地のわが家の庭、夏井川渓谷にある隠居の庭には、名前の知らない虫も来る。生き物は温暖化の影響をもろに受ける。手元にある図鑑ではわからないことが多くなった。それを教えてくれる。
その一つがクロコノマチョウだ。去年(2020年)夏の夜、見たこともないチョウがわが家の茶の間に入って来た。天井の梁(はり)に止まったところを撮影し、形と紋様をスケッチしたあと、ネットで検索した。南方系のクロコノマチョウ(黒木間蝶)だった。
鳥海さんはこのチョウについて、「いつの間にかいわきでも見られるようになった、秋型が越冬するかどうかを確認したい」という話をした。
今年の9月後半、隠居の庭でメヒシバを引っこ抜いていたら、クロコノマチョウの幼虫=写真=に遭遇した。さらに1週間後、幼虫が蛹になっていた。
成虫は、翅が木肌色をしていて地味だが、緑色の幼虫は角から顔の輪郭が黒く縁取られている。まるで仮面をかぶっているような感じだった。むろん初めて見た。
今回の講座では、差塩湿原の乾燥化が進んでいること、浮島状の内倉湿原が陸地化しつつあること、川内村・平伏(へぶす)沼のモリアオガエルの産卵が早まっていることなどを報告したあと、平地の白水阿弥陀堂の池や松ケ岡公園のひょうたん池、お城山の丹後沢公園の「今」を解説した。
疑問に思っていたことがある。阿弥陀堂の池のハスが今年は咲かなかったという。アカミミガメ(ミドリガメ)がハスの芽を食べ尽くしたからだ、という話をネットで読んだ。鳥海さんと会ったときにその話になった。
鳥海さんはカメではなく、イノシシが主犯という話をした。現地を調べて、イノシシがレンコンを食べたことによる消滅だった、と判断した。
ネットでは、確かに他市の例としてアカミミガメ犯人説を拾うことができる。カルガモもハスの新芽を食べる。茨城県土浦市やかすみがうら市の霞ケ浦周辺では、年間を通じてイノシシがレンコンを食害しているという。
同県の調査では「アカミミガメはハスの芽や伸長した若い茎葉は食べるが、可食部(レンコン)は食べない」ことが確認されている。
何年か前に阿弥陀堂の入り口の手前、駐車場に続く広い芝生の広場がイノシシに掘り荒らされているのを見た。夏井川渓谷の隠居でも下の庭が広範囲にほじくり返された。ものすごいラッセル痕だった。
ミミズ、タケノコ、ヤマノイモ、日本産トリュフ、ヤマユリの根、ジャガイモ……。そして、今度はレンコン。イノシシの食欲はすごい。いや、すさまじい。
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