2021年11月26日金曜日

カメムシが留守番

                              
  街にいるときは、向き合う相手は人間。鳥や虫のことは忘れている。せいぜい「燃やすごみの日」にカラスを警戒し、庭にやって来る鳥の声に「おや、ヒヨドリだ」「スズメだ」と反応するくらい。

日曜日に夏井川渓谷の隠居へ行くと、これが逆転する。鳥獣虫魚の世界(といっても、釣りをしないので水の中のことはわからない)、なかでも虫の王国に「ちょっとお邪魔します」といった感覚に変わる。

虫だけではない。庭の木や地面にキノコが生える。草が生える。ほっとけばたちまち庭は荒れ野に変わる。草を刈る(刈ってもらう)のは、ある意味では人間の暮らしがそこにあるというシグナルのようなものだ。

10月末、カミサンが庭のウツギの切り株にキノコが生えているのを見つけた。スギタケの仲間だった=写真上。

同じモエギタケ科にヌメリスギタケモドキがある。20年ほど前、立ち枯れの大木に大発生しているのに出合った。このとき初めてコウモリ傘を開いて逆さにし、柄の長い小鎌でこそげ落とした。渓谷では絶えずキノコの胞子が飛び交っている――そんな感覚にもなる。

虫の話に戻る。隠居の中にも「訪問者」が絶えない。ガラス戸を開放している夏はアブ、ハチ、蚊、アリ。戸を閉めている秋~春はカメムシ。いろんなカメムシがいるが、よく現れるのはこれ=写真下。クサギカメムシらしい。

カメムシは隠居のなかで越冬する。四半世紀前に隠居へ通い始めたころ、カメムシとテントウムシが雨戸の溝の中で眠っていた。

座布団や布団、冬着などが増えていくと、そこにも入り込んで冬をやり過ごすようになった。物置のゴザのすきまにも入り込む。

晩秋から春にかけて、来客に座布団を出す、泊まり込みで同級会をやる、ダウンジャケットを着る、といったときに、カメムシがパラパラと畳に落ちる。部屋が温まると、どこからか現れる。パクチー臭の噴射を避けるには――サッとほうきで掃き出す。

近所の家では網戸やガラス戸に忌避剤を噴霧し、すきまをテープでふさぐ。寄り合いができる「談話室」には超音波式の駆除器をおく。しかし、ストーブで部屋が温まると何十匹も現れる。駆除器の効果はなかったようだ。

わが隠居でも、今年(2021年)の正月、後輩からクスノキの薪をもらって、隠居の茶の間などに置いた。防虫剤の樟脳(しょうのう)はクスノキが主成分だ。クスノキ本体を置けば、強烈な香りに負けてカメムシが逃げていくのではないか。そんな期待を抱いたのだが……

効き目があったかと聞かれたら、なかったかも、と答えるしかない。結局、冬はカメムシが留守番をすることになる。

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