2021年11月21日日曜日

運動能力

        
 大リーグの大谷翔平選手(エンゼルス)がアメリカンリーグのMVP(最優秀選手)に選ばれた。各メディアが大きく報じている。

 今年(2021年)は、私らシルバー世代も大谷選手の活躍に目を見張った。投げて、打って、走る――分業化したプロの世界でひとり、総合力を発揮した。街の声にもあったが、「劇画」に出てくる超人のようなはたらきだ。

11月18日の朝日新聞に、大谷や菊池雄星投手が出た花巻東高校硬式野球部監督佐々木洋さんのインタビュー記事が載った。これがおもしろかった。

 「指導者で才能が開花するというのはうそです。大谷や菊池を私が育てたとは恐ろしくて言えません」。この「恐ろしくて」という言い方に引かれた。大谷や菊池の豊かな才能を思い、指導する側の眼力の確かさを感じた。

 東京の子と同じように体も運動神経もいい岩手の子がなぜ結果を出せないのか――佐々木さんは理由を探る。

「東北の冬は雪深く、実戦練習ができない。だから走り込みをしたり、雪を固めてサッカーをさせたりしていた。下半身こそ基本だ、とか言って」

 すぐ頭に浮かんだのが中学校の冬の体育授業だ。体育館がなかったので、雪のグラウンドでサッカーをした。阿武隈高地でも、指導者の発想は同じだった。

 佐々木さんはそのあと、こう続ける。「野球は前から来るボールを打つ競技です。それができるようになる練習を考えないといけない。(略)ひたすら走り込めばマラソン選手のように下半身が細くなってしまう。うちでは投手はあまり走らせません」

 なるほど、これもわかる。高専時代、陸上競技部に所属していた。同じ部員でも、短距離と長距離では足の筋肉の付け方が違う。

インタビュー記事にあるように、長距離選手の足は走り込むことで細くなる。短距離選手は逆に太ももがはち切れそうになる。昭和39(1964)年の東京オリンピック。マラソンで優勝したアベベを、100メートルに出場した飯島秀雄選手を思い出す。

魚にたとえると、短距離選手は赤身のマグロ、長距離選手は白身のサケだろうか。

佐々木さんはこんなことも言っている。「身体能力は重要です。骨格は遺伝するので、親も観察します。さらに重視するのは、親が子どもにどんな言葉をかけているか、他の親とどんなふうに接しているか。親の育て方や考え方で子どものマインドは変わり、伸びしろに差が出ると感じています」

 「脳力」は遺伝しないが、「運動能力」は遺伝する――と、昔、知り合いの体育教師からいわれたことがある。確かに、イヤになるほど速い仲間が何人もいた。親も速かったのだろう。私は、親が速かったという話は聞いたことがない。が、そこそこではなかったか。で、リレー走者としてはチームで一番遅かった。それでも走ることは好きだった。

最初、体が弱くて走ることとは無縁だった上の孫が小学6年生のとき、市の小学校陸上競技大会に出るというので見に行った=写真。結果には驚いた。下の孫は、これはもう走るために生まれてきたようなところがある。

ごみが落ちていればさりげなく拾ってポケットにしまう、大谷選手の人間性。これは親との関係の中で培われたものだろう。孫たちが見習ってほしい、という前に、大人が、私たちが見習うところもある――そんなことを感じさせるインタビュー記事だった。

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