2021年11月28日日曜日

けんちん汁

                      
 さすがにいわきの平地でも寒さがこたえるようになった。先日、夏井川渓谷の隠居の座卓(こたつ)にカバーをかけた。

 平地のわが家でも夏はカバーをはずしてこたつを座卓にしている。11月に入ると、座卓の下に毛布を置いて足を入れていたが、それではほかの人間が暖まれない。座卓の上にある文具や資料をいったんどけて、カバーをかけた。四畳半と六畳ぶち抜きの空間なので、石油ストーブ1台では間に合わない。ヒーターも出した。やっと冬の部屋に切り替わった。

 夜はこたつが食卓になる。ときどき具だくさんの「けんちん汁」が出る。いわきでも、中通りの阿武隈高地でも、「けんちん」といえば味噌仕立ての豚汁のことだ。

 暦が11月に替わってすぐの晩、このけんちん汁が出た=写真。隠居の畑で栽培している三春ネギと、庭のモミの樹下から採ったアカモミタケ、好間の直売所で買ったニンジン、里芋、ほかにこんにゃくや豆腐、ゴボウが入っている。

これをおかずに晩酌を始める。キノコからいい出汁が出ていた。ニンジンと里芋がやわらかい。三春ネギからはほのかな香りが立つ。この時期だけの組み合わせだ。

いつもそうだが、けんちん汁があれば、ほかにおかずは要らない。しかも、晩酌はだらだらと続く。必ず「おかわり」になる。

大きめの鍋でつくるので、1回では食べきれない。次の日の朝もけんちん汁が出る。余れば、また晩酌のおかずにする。ほかの人間はさすがに食傷気味だが、私はかまわない。

 10日後にまた、けんちん汁が出た。三春ネギは1センチの小口切りにしてもらった。ふだんはやや長めの斜め切りが多い。

小口切りは子どものころの「原記憶」だ。小口切りのネギとじゃがいもの味噌汁が出ると、ふるさとの食卓の光景がよみがえる。けんちん汁もそれでいちだんと好ましいものになる。めったに食べられなかった豚肉も味を引き締める。

冬はけんちん汁で朝ご飯、となれば、おかずは自前の白菜漬けだけでいい。カミサンもその分、手を抜ける。その白菜漬けだが……、1回目のできがよくなかった。

11月中旬に三和のふれあい市場(直売所)で白菜2玉を買った。次の日の朝、八つ割りにして天日に干し、さらに翌日、甕を出して漬け込んだ。

去年までは減塩と暖冬もあって、甕の表面にすぐ産膜酵母が張った。今年はそれを抑えるために食塩を多めにした。

これが「多すぎた」ようだ。漬けて1週間もしないうちに試食したら、まだ塩味が残っている。次の日も、また次の日も。もう2週間になるが、塩がなじんだという感覚はない。

食べるときには水に浸けて塩分を抜く。キュウリの古漬けと変わりがない。水に浸けた白菜漬けは、パリパリ、シャキシャキとは程遠い。

 これではお福分けをするわけにもいかない。といって、水っぽい白菜漬けを食べ続けるのもいやだし……。1回くらいはけんちん汁の具に加えてみるか。

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