2021年11月14日日曜日

このカミキリは?

                       
 郡山市の街路樹(イヌエンジュ)がカミキリムシの幼虫に食い荒らされて孔(あな)だらけになり、枯れて枝が落下したり幹が倒れたりする被害が出ている――。テレビのニュースを見て、夏に夏井川渓谷の隠居へ迷い込んできたカミキリムシ=写真=のことを思い出した。名前はわからない。

 郡山のカミキリは、中国などが原産の「サビイロクワカミキリ」で、国内初確認だという。同市の樹木医が伐採木を手に入れ、中に幼虫がいることを確認した。夏に見たこともない成虫が出てきたので、国の研究機関で調べたところ、サビイロクワカミキリとわかった。

 郡山市は東北南部、福島県中通りの中央に位置する。そこにだけ、なぜこのカミキリが出現したのか。

 福島県のホームページで、別のカミキリムシについて注意を喚起していた。やはり中国などが原産のクビアカツヤカミキリで、幼虫がサクラやモモの木の内部を食い荒らす。やがて木は枯れる。枯れると落枝・倒木がおこる。成虫を見つけたらその場で駆除するように、ということだった。

 このカミキリは、外国産の梱包資材にまぎれて国内に侵入したらしい。2018年には輸入や飼育などが規制される特定外来生物に指定された。

サビイロクワも、クビアカツヤと同じような経緯で郡山に侵入したのだろう。幼虫はイヌエンジュのほかにエンジュも孔だらけにする。早晩、特定外来生物に指定されるのではないか。

幼虫が樹木の内部を食い荒らすという事例は、いわき市でも起きている。ナラ枯れだ。ナラ枯れの犯人は体長5ミリほどの小さな昆虫・カシノナガキクイムシ(カシナガ)。

雄がまず大径木のコナラなどに孔をあけ、集合フェロモンに誘われた雌がそこで交尾をして産卵する。卵からかえった幼虫は内部へと孔を掘り進めながら成長・越冬し、翌年6~8月、新成虫として一帯に散らばる。

いわき市では平成30(2018)年、田人地区で初めて確認され、あっという間に被害が拡大した。去年(2020年)は行政当局にも市民から情報が相次いだという。

実際、私自身も8月、平地と夏井川渓谷が接続するあたりで山が茶髪になっているのに驚いた。

さて、渓谷の隠居に現れたカミキリだが、見た目は地味な木肌模様をしている。触覚は長い。背中の模様と色合い、後ろ肢の位置などをスケッチして、ネットで検索した。

街路樹を食害するサビイロクワカミキリでも、クビアカツヤカミキリでもない。消去法でいくと、ヒメヒゲナガカミキリに似る。雄の触覚(ヒゲ)は体長の2倍はあるというが、そこまではない。すると、雌?

ヒメヒゲナガの成虫は伐採木に集まるそうだ。隠居の庭に現れても不思議ではない。敷地のへりに沿って、庭木の伐採枝が垣根のようになっている。

それでも、決め手に欠く。結論は「保留」だ。名前のわからない渓谷の生き物が、こうしてまたひとつ増えた。

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