郡山市の街路樹(イヌエンジュ)がカミキリムシの幼虫に食い荒らされて孔(あな)だらけになり、枯れて枝が落下したり幹が倒れたりする被害が出ている――。テレビのニュースを見て、夏に夏井川渓谷の隠居へ迷い込んできたカミキリムシ=写真=のことを思い出した。名前はわからない。
郡山のカミキリは、中国などが原産の「サビイロクワカミキリ」で、国内初確認だという。同市の樹木医が伐採木を手に入れ、中に幼虫がいることを確認した。夏に見たこともない成虫が出てきたので、国の研究機関で調べたところ、サビイロクワカミキリとわかった。
郡山市は東北南部、福島県中通りの中央に位置する。そこにだけ、なぜこのカミキリが出現したのか。
福島県のホームページで、別のカミキリムシについて注意を喚起していた。やはり中国などが原産のクビアカツヤカミキリで、幼虫がサクラやモモの木の内部を食い荒らす。やがて木は枯れる。枯れると落枝・倒木がおこる。成虫を見つけたらその場で駆除するように、ということだった。
このカミキリは、外国産の梱包資材にまぎれて国内に侵入したらしい。2018年には輸入や飼育などが規制される特定外来生物に指定された。
サビイロクワも、クビアカツヤと同じような経緯で郡山に侵入したのだろう。幼虫はイヌエンジュのほかにエンジュも孔だらけにする。早晩、特定外来生物に指定されるのではないか。
幼虫が樹木の内部を食い荒らすという事例は、いわき市でも起きている。ナラ枯れだ。ナラ枯れの犯人は体長5ミリほどの小さな昆虫・カシノナガキクイムシ(カシナガ)。
雄がまず大径木のコナラなどに孔をあけ、集合フェロモンに誘われた雌がそこで交尾をして産卵する。卵からかえった幼虫は内部へと孔を掘り進めながら成長・越冬し、翌年6~8月、新成虫として一帯に散らばる。
いわき市では平成30(2018)年、田人地区で初めて確認され、あっという間に被害が拡大した。去年(2020年)は行政当局にも市民から情報が相次いだという。
実際、私自身も8月、平地と夏井川渓谷が接続するあたりで山が“茶髪”になっているのに驚いた。
さて、渓谷の隠居に現れたカミキリだが、見た目は地味な木肌模様をしている。触覚は長い。背中の模様と色合い、後ろ肢の位置などをスケッチして、ネットで検索した。
街路樹を食害するサビイロクワカミキリでも、クビアカツヤカミキリでもない。消去法でいくと、ヒメヒゲナガカミキリに似る。雄の触覚(ヒゲ)は体長の2倍はあるというが、そこまではない。すると、雌?
ヒメヒゲナガの成虫は伐採木に集まるそうだ。隠居の庭に現れても不思議ではない。敷地のへりに沿って、庭木の伐採枝が垣根のようになっている。
それでも、決め手に欠く。結論は「保留」だ。名前のわからない渓谷の生き物が、こうしてまたひとつ増えた。
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