まだ4月中旬だから、と油断したのがいけなかった。夏井川渓谷の隠居で土いじりをしているうちに、ブユにかまれたらしい。
満開のシダレザクラに誘われて、樹下で一服した。その前から向こうずねがかすかに痛痒かった。
むしろに座ってズボンの裾をめくると、靴下のすぐ上が赤く腫(は)れている。手ふき用の除菌ウェットシートで患部をきれいにした。3カ所にかみ跡があった。
初夏から秋にかけては、ブユだけでなくアブも出る。土いじりには帽子、長靴、腕カバーと軍手が欠かせない。首には汗をふくための手ぬぐい。春は、これが首筋の防寒を兼ねる。
ところが、渓谷の春は始まったばかり、まだブユやアブは現れない――。甘くみて、スニーカーから長靴に履き替えるのを怠った。
畑の隅に生ごみを埋める。ネギ苗床の草むしりをする。庭に生えているノビル(方言名・ノノヒョロ)を掘り取る。
フィールドカートに座りながら作業を続けたので、ズボンの裾と靴下の間にぽっかりすきまができた。
先の「夏日」続きで、ズボンをコール天から薄手のものに替えた。靴下も短めだった。座るとすねが見える。ブユには好都合だったわけだ。
アブもブユも清流の生きもの。渓谷の水環境をはかる指標になる。活動時期は、アブが6~9月、ブユは早くも3月には発生するという。ブユの生態を忘れていた。
街で暮らしている分には、この厄介者とは縁がない。が、山里では特に朝晩、ブユが活動する。
蚊は、雌が血を吸う。ブユも同じだという。すぐ痛みを伴う蚊と違って、ブユはいつ皮膚をかんで血を吸ったかがわからない。ひどいときには、痛痒さが何日も続く。
ブユの痛痒さと赤い腫れを見ながら、今年(2022年)は蚊の出現が早くなるのではないか、そんな直感がはたらく。
わが家で初めて蚊に刺された日を記録している。平均は5月20日。去年は6日早い5月14日にチクリとやられた。
これから茶の間のガラス戸を開けておく日が多くなる。4月10~13日の「夏日」がそうだった。
午後になると庭からヤブカが、夜にはイエカが現れる。今のところ、耳元は静かだ。羽音が聞こえるようなことはない。
が、季節は4月末からの大型連休をはさんで初夏に入る。茶の間だけでなく、玄関の戸も、台所の窓も開け放たれる。
去年の例と、今度の「夏日」続きからして、蚊は間違いなく早く現れる――そう踏んで蚊取り線香の準備をしておかないと。
ま、それはそれとして、せっかく掘り取ったノビルがある。調理はいたって簡単。土を洗い落とし、鱗茎のひげ根をカットして、緑色の葉の部分も、生のまま味噌につけて食べる=写真。日曜日の夜は、カツオの刺し身がメーンだ。副菜として、この春の土の味を楽しんだ。
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