ある集まりで配られた資料の中にあった。「下高久FARM」通信初号。A3二つ折り、つまりはA4サイズ4ページのリーフレットで、しゃれた表紙には「みんなが楽しめる自然な場所を。」「ツナガル畑、はじめました。」とある。
中を開くと、「4人のおじさん」が休耕地を借り受け、「集いの里
下高久ファーム」として整備したこと、自分に合った農園を選べることなどが書かれている=写真。
場所は下高久字馬場。掲載の地図を見ると、県道下高久谷川瀬線の近く、菅波園芸の裏手に農園がある。
事業主体、つまり市民農園の開設者は「明るい農村カンパニー」(小野田康行代表)だ。4人の設立メンバーのうち、2人を知っている。
借り受けた休耕地は600坪、ざっと2千平方メートルはある。それを10坪、20坪、30坪、40坪と4段階に分けて利用できるようにした。
年間の利用料金は10坪・5千円、20坪・8千円(団体1万円)、30坪・1万円(同1万5千円)、40坪・1万5千円(同2万円)だ。
定年後の趣味に野菜づくりを始めたい、友人同士で楽しく野菜をつくりたい――そういう人のための農園だという。
趣味の土いじりとはいっても、いろんな道具が必要になる。なかでも年配者は畑の耕起がこたえる。
そういった面にも配慮して、耕運機や草刈り機は無料で借りられる。プロの農家の指導も受けられる。休眠時にはトラクターで全面耕作・施肥を実施するなど、サポート体制も充実している。
それだけではない。利用者同士、利用者と一般市民の「つながり」も重視する。親子一緒の収穫体験、自分たちが作った野菜をプロのシェフが調理する賞味会、いわき昔野菜の種の交換会などを計画している。各種イベントにも参加し、育てた野菜を販売する。
リーフレットを読み進めるうちに、これは農家の後継者不足や地産地消といった課題と向き合った新しいかたちの市民農園ではないか、と思った。
行政や農協が市民農園の開設者になることはある。農家(所有者)が開設することもある。しかし、市民が休耕地を借り受けて、市民に利用の場を提供する、というのは、いわきでは初めてではないか。
ブログで紹介していいか――。知人に聞くと、うなずく。家に帰って原稿を書き始めたら、夕刊(いわき民報)が届いた。1面トップでこの市民農園のことを報じていた。
リーフレットだけでは伝わらない、設立メンバーの生の声が載っていて、なるほどと感心した。
小野田代表はイタリア料理店「テラッツァ」のオーナーで、市内の農家と直接取引を始め、さらに下高久に農地を借りて野菜作りにも挑戦した。一方、知人たちも近くの畑でいわき昔野菜の保存に取り組んでいた。
一昨年(2020年)2月から話し合いを重ね、実行に移し、情報紙を発行するまでに至った。
なんというか、リーフレットで組み立てた「骨」に、新聞記事で「肉付け」ができて、少しは人のつながりが見えてきた――そんな思いでこの原稿を仕上げた。
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