2022年4月28日木曜日

漫画「悪女(わる)」

  「『悪女(わる)』がドラマになった」。カミサンが新聞のテレビ欄を見てつぶやく。「あの漫画の『悪女』?」「そう」

 先日、漫画『家栽の人』を紹介した。その漫画よりだいぶ前に読んだ記憶がある。当時、勤めていたいわき民報に週一でコラムを書いた。『家栽の人』も、「悪女」もそのなかで取り上げた。

 掲載年月日を入れてコラムを本にした。『悪女』は1991年1月9日付。元号でいうと、平成3年。もう31年前、42歳のときだ。題して「田中麻理鈴を知る」。短いので全文を紹介する。

 ――正月三が日は、例によってぐうたらしてしまった。暮れの戦いが済んだあとだけに、気持ちの上では三日間、わが家に“ドック入り”したようなものである。おかげで去年の毒は相当薄まったように思う。

 テレビを見て、本を読んで、昼に起きて、酒は少しに抑えてと、何も考えずに気ままに過ごした。古い殻を破り新しい殻をまとうには、頭をからっぽにする時間が必要らしい。

 たまたま目の前にあった深見じゅんの漫画『悪女』が面白くて、十巻まで一気読みした。三流大学を四流の成績で卒業した落ちこぼれ新人女子社員が、一目ボレの男を探すために「社内一巡出世ゲーム」を繰り広げる。

 出世のために恋をあきらめるのではなく、恋のために出世しようと頑張る主人公、田中麻理鈴。国際経済がどうの、トレンドがどうの、と知をひけらかすエリート社員とは無縁の雑草パワーが、大企業の先行き不透明感に新たな光を呼び込む、という筋立てである。

 実際、大企業であれ中小企業であれ、これまでの路線の延長では生き残り戦略が組めない時代に入った。いや、むしろそれを否定するくらいの発想の大転換が求められている、といってもよい。正月休みの拾い物は、この「悪女」。麻理鈴の発想を少しは見習わねば――。

「麻理鈴」は「まりりん」と読む。父親がマリリン・モンローのファンだったので、娘が生まれたときに「麻理鈴」の漢字を当てた、そういう設定になっている。

今年(2022年)の4月20日付いわき民報。テレビ欄に番組の記事が載っていた=写真。ネットで情報を集めたら、テレビドラマ化は今度で2回目らしい。前は読売テレビから日テレ系列で放送された。

そのときの麻理鈴役は石田ひかり。今回は日テレが制作している。この4月にスタートした。麻理鈴役は今田美桜、石田ひかりは2回目に課長役で特別出演をした。

問題は放送時間だ。水曜日の夜10時、福島中央テレビ。最近は私も、カミサンも9時には眠りに就いている。

「起きられるかな」。そう言いながら、いったん眠りについたカミサンがドラマを見たらしい。「どうだった?」。朝、感想を聞くとかんばしい答えは返ってこなかった。

   それはそうだろう。石田ひかりくらいの年齢ならともかく、その母親くらいになっている。孫のような麻理鈴と一緒に「男社会」で仕事をしているような気分になられたら、かえって恐ろしい。それなりに老いを自覚しているようで安心した。 

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