2022年4月21日木曜日

デトックス効果

       
  このところずっと、週初めになると「春の土の味」が出る。フキノトウから始まって、セリ、ヨモギと続く。夏井川渓谷の隠居の庭に生えてきたものばかりだ。

 日曜日に隠居へ出かける。私は菜園で土いじりをする。カミサンは摘み草をする。フキノトウとセリはカミサンが、ヨモギはカミサンとカミサンの友達が摘んだ。

 フキノトウはみじんにして味噌汁に散らす、てんぷらにする、が定番だ。アルミホイルにくるんで蒸す、という手もある。味噌汁以外は晩酌のおかずだ。

 セリはてんぷら=写真上1、そしておひたし。ヨモギもてんぷらになって出てきた。ヨモギのてんぷらは、しかし、食べるのに時間がかかる。味に特徴があるわけでもない。

カミサンの友達は、ヨモギのホットケーキをつくった=写真上2。ヨモギを刻んでペーストにしたのを生地に加えた。味は基本的にホットケーキそのものだが、見た目が新鮮だった。

 フキノトウやセリ、ミツバは苦くて香りが強い。よくいわれるのが「デトックス効果」だ。デトックスとは体内の老廃物、あるいは毒素を排出することで、苦みにはこの効果が、香りにはストレスを解消する働きがあるという。

 もう30年以上前のことになる。漫画『家栽の人』を買って読みふけったことがある。主人公は桑田さん。裁判官だから、タイトルは「家裁の人」でもおかしくないのだが、あえて「裁」が栽培の「栽」になっている。

 「裁くことより育てることが大切だと、その判事は考える。だから『家栽の人』なのだろう。(略)暇があると裁判所の庭へ出て土いじりをしている」

 40代で書いた拙文が残っている。この裁判官は無類の花好き、そして無類の園芸家でもある。

 「説教するわけではない。差別や偏見からも遠い。ただ、草木を語りながら人間を語り、離婚や財産争い、少年事件の原因となった心の問題に、ヒントを投げかける。(略)花を眺めている瞬間は、だれもがやさしくなれる――殺伐とした世の中の鎮静剤、桑田さんは人間の心に種をまく人だった」

 それからの連想で、畑で栽培されるキュウリやニンジンは、「野菜」よりは「家菜(やさい)」、山野に生えるセリやミツバこそ「野菜」と呼ぶべきではないか、などと、どうでもいいことを考えたものだった。

 先日は、ハマに近い農村部に住む親友が栽培物のハマボウフウを持ってきてくれた。これも酢味噌和えにした=写真上3。ハマの「春の土の味」にもデトックス効果がある。

 3~4月はこうして、体内から毒素を排出する食べ物が続く。ちょっと食べすぎではないか、逆に新しい毒素が体内にたまらないか、などと気をもんだりするくらいに。

 食べ物ではなく、心のデトックス効果という点では、日曜日に渓谷で過ごすのが一番。なんといっても気分転換になる。 

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