このところずっと、週初めになると「春の土の味」が出る。フキノトウから始まって、セリ、ヨモギと続く。夏井川渓谷の隠居の庭に生えてきたものばかりだ。
日曜日に隠居へ出かける。私は菜園で土いじりをする。カミサンは摘み草をする。フキノトウとセリはカミサンが、ヨモギはカミサンとカミサンの友達が摘んだ。
フキノトウはみじんにして味噌汁に散らす、てんぷらにする、が定番だ。アルミホイルにくるんで蒸す、という手もある。味噌汁以外は晩酌のおかずだ。
セリはてんぷら=写真上1、そしておひたし。ヨモギもてんぷらになって出てきた。ヨモギのてんぷらは、しかし、食べるのに時間がかかる。味に特徴があるわけでもない。
カミサンの友達は、ヨモギのホットケーキをつくった=写真上2。ヨモギを刻んでペーストにしたのを生地に加えた。味は基本的にホットケーキそのものだが、見た目が新鮮だった。
フキノトウやセリ、ミツバは苦くて香りが強い。よくいわれるのが「デトックス効果」だ。デトックスとは体内の老廃物、あるいは毒素を排出することで、苦みにはこの効果が、香りにはストレスを解消する働きがあるという。
もう30年以上前のことになる。漫画『家栽の人』を買って読みふけったことがある。主人公は桑田さん。裁判官だから、タイトルは「家裁の人」でもおかしくないのだが、あえて「裁」が栽培の「栽」になっている。
「裁くことより育てることが大切だと、その判事は考える。だから『家栽の人』なのだろう。(略)暇があると裁判所の庭へ出て土いじりをしている」
40代で書いた拙文が残っている。この裁判官は無類の花好き、そして無類の園芸家でもある。
「説教するわけではない。差別や偏見からも遠い。ただ、草木を語りながら人間を語り、離婚や財産争い、少年事件の原因となった心の問題に、ヒントを投げかける。(略)花を眺めている瞬間は、だれもがやさしくなれる――殺伐とした世の中の鎮静剤、桑田さんは人間の心に種をまく人だった」
それからの連想で、畑で栽培されるキュウリやニンジンは、「野菜」よりは「家菜(やさい)」、山野に生えるセリやミツバこそ「野菜」と呼ぶべきではないか、などと、どうでもいいことを考えたものだった。
3~4月はこうして、体内から毒素を排出する食べ物が続く。ちょっと食べすぎではないか、逆に新しい毒素が体内にたまらないか、などと気をもんだりするくらいに。
食べ物ではなく、心のデトックス効果という点では、日曜日に渓谷で過ごすのが一番。なんといっても気分転換になる。
0 件のコメント:
コメントを投稿