2022年4月6日水曜日

これも「文化菌類学」?

           
 いわき総合図書館はいわき駅前再開発ビル「ラトブ」の4~5階に入居している。ざっくりいえば、4階は文学・生活、5階は郷土資料と歴史・科学などで、そのときの興味・関心によってエレベーターを降りる階が変わる。

まずは新着図書コーナーをチェックする。4階と5階の階段そばには、テーマを決めて図書を展示するコーナーがある。それも階段を利用するときにチェックする。

5階のテーマ展示は、春らしく「植物」だった。植物関係の本が並んだなかに1冊、キノコ関係の本があった。『ふしぎな生きものカビ・キノコ 菌学入門』(築地書館、2007年)=写真。

 なぜ、キノコの本が? 著者の名前に覚えがあった。ニコラス・マネー。そして、訳者も。日本の菌学の第一人者、小川真だった。

最近、新着図書コーナーにあったマネーの『酵母 文明を発酵させる菌の話』(草思社、2022年)を借りて読んだばかりだ。

著者はアメリカオハイオ州のマイアミ大学生物学教授で、カビからキノコまで幅広く菌類の形態や生活などを研究しているという。

マネーの本ならわかりやすくておもしろい。「文化菌類学」の知識が得られるに違いない――さっそく借りて読んだ。

 若いころは、植物=生産者、動物=消費者、菌類=分解者と、キノコ図鑑のなかだけで単純に自然界を見ていた。

しかし、キノコを採ったり、調べたりしているうちに、植物と菌類は互いに関係しあって生きていることがわかってきた。

2年前に出版された齋藤雅典編著『菌根の世界――菌と植物のきってもきれない関係』(築地書館)にこんな文章がある。

菌根菌(キノコなど)は「陸上植物の約八割の植物種と共生関係を結んでいる。菌と植物の共生である菌根が地球の緑を支えていると言えるだろう」

シイタケやヒラタケのように木材を腐朽させるキノコもあるが、大多数はマツタケなどのように木の根と協力し合って生きている、と知って、森を見る目が変わった。要するに、キノコは分解だけでなく緑の生産にも深く関与しているのだ。

ダ―ウインの娘に嫌われたキノコ、菌は地球の先住者、トリュフの進化の物語、キノコ狩りは是か非か、飢饉をひき起こしたジャガイモ疫病菌……。 『ふしぎな生きもの――』には「文化菌類学」的な見出しが並ぶ。

キノコ狩りは是か非か、から一つ。「ある国ではキノコ狩りが立派な商売になり、アマチュア菌学者を自称する多くの人を含めて、大衆のレクリエーションになっているそうです」

 「商売」に関する注釈には、「1992年にアメリカ北西部の太平洋沿岸地域の森林から採られた野生キノコ(アメリカマツタケなど)は、およそ200万ポンド、金額にして4000万ドルにのぼる。世界市場での取引高は、マツタケが約30億ドル、アンズタケが15億ドルになる」とあった。

 アンズタケは北欧を中心によく食べられる。マツタケは? 「ある国」では松林が放置されて富栄養化し、マツタケが激減した。そのため、世界から代替品を集めるようになった。それを皮肉っているようでもある。

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