11年前の春、市川前支所発のネット情報で知った。それによると、十数本が密生しているように見えるが、根元は一つ。雌雄異株で、雄株という。4月下旬、対岸の県道小野四倉線から鮮やかな新緑に包まれている巨木と対面した。大きさに圧倒された。以来、県道を通るたびに巨木を仰ぐ。
いわき市内には田人町旅人字和再松木平に市の保存樹木がある。「田人のカツラ」は高さが11.7メートル、幹回りが3.5メートル。見たわけではないが、「川前のカツラ」よりは小ぶりなようだ。
福島県内ではどうか。郡山市湖南町に国指定天然記念物の「赤津のカツラ」がある。こちらは高さが25メートル、幹回りが9メートル超だという。「川前のカツラ」は「田人のカツラ」をしのいで、「赤津のカツラ」といい勝負ではないか――データからそう感じた。
猪苗代湖周辺の観光を兼ねたミニ同級会(6月9~10日)で、初日に郡山市湖南町の「郡山布引風の高原」を訪ねた。標高は1000メートルほど。大根と風力発電で知られる山上の平原だ。
高原に近づくにつれて道はつづら折りになる。と、標高900メートルほどの沢沿いに「赤津のカツラ」の標識が立っていた。「赤津のカツラ」はここにあったのか! 驚いて、うめいたのかもしれない。帰りに、朋友が車を止めてくれた。
カメラを向けながら、無印の「川前のカツラ」と国指定天然記念物の「赤津のカツラ」=写真=を比較していた。標識のそばに案内板が立っている。「幹は地上1.2メートルの辺りから大小数十本に枝分かれしています」。川前の方は「十数本」だが、見た感じではそう負けていない。「赤津のカツラ」が横綱なら「川前のカツラ」は大関、といってもいい。
この11年間に新しくいわき市の天然記念物に指定された樹木は、「下三坂の種まきザクラ」と「本行寺のオハツキイチョウ」の2件だけだ。「川前のカツラ」はなぜ無指定なのか――「赤津のカツラ」と対面して、いよいよ疑問が増した。
0 件のコメント:
コメントを投稿