2019年6月27日木曜日

6月の生物ごよみ

 まだかな、まだかな――。6月は7日の梅雨入り後、夏井川渓谷の隠居へ行くたびに、ホタルブクロが咲いているかどうかをチェックした。先の日曜日(6月23日)、やっと道端に咲いているのを確認した。
  いわきの平地の庭で咲き出したのは、5月の終わりから6月初めにかけて=写真上。標高200メートルの渓谷で咲くまでには、3週間ほどの“時差”があったことになる。

 フェイスブックで若い仲間が今年(2019年)の、いわきのホタル出現状況をアップしている。たまたま夕べ、家に来たので聞いてみた。水田地帯のホタルには、ゲンジボタルとヘイケボタルがいる。先に現れるのはゲンジ。「まだゲンジ」という。

 ホタル情報が載り始めたのは、ちょうど平地でホタルブクロの花が満開になったころだ。ホタルブクロとはよくいったもので、ゲンジボタルが現れる、ホタルブクロの花が咲く、となれば、昔の子どもたちは夜、近くの用水路でゲンジをつかまえては釣り鐘状の花に閉じ込めて、点滅する光を楽しんだものだ。

 いわきでは、それが6月前半。標高が高くなるにつれて6月後半、あるいは7月前半にずれ込む。阿武隈の山里で生まれ育った私は、ホタル狩りをしたのは、7月も夏休みに近いころだった記憶がある。蚊帳(かや)のなかにホタルを放して、点滅するなかで寝入ったものだ。そのころはもうヘイケボタルだったかもしれないが。

 前置きが長すぎた。いきものといきもの、いきものと人間の関係は、「場所」によって異なる。福島県は会津・中通り・浜通りに区分される。西から越後山脈・奥羽山脈・阿武隈高地が屏風のように立って、それらを分けている。その山並みにもまた、垂直的ないきもののすみわけがある。

6月は、9日に磐梯熱海温泉でミニ同級会が開かれた。その前後、奥羽山脈を越えて会津を巡った。

白虎隊が自刃した飯盛山の近くにある「会津武家屋敷」を訪ねたとき、茶室のそばの小さな池で、野太く明朗なカエルの鳴き声を聞いた。見ると、池にかかる低木にモリアオガエルの卵塊があった=写真右。

モリアオガエルといえば、阿武隈高地の川内村・平伏沼(へぶすぬま)が、産卵地として国の天然記念物に指定されている。森があって水たまりがあれば、モリアオガエルはその上の木の枝に卵塊をつくる。今年(2019年)も産卵のピークを迎えたと、先週金曜日(6月21日)の新聞が伝えていた。阿武隈だけでなく、会津の山々にもモリアオガエルは生息しているわけだ。

会津日新館では、駐車場の車止め兼花壇に白いキノコが点在していた=写真左。幹事が「食べられるの?」と聞く。「もう食毒は超えた。形とか色に引かれて調べるのが楽しみ」と返したものの、キノコの名前がわからない。傘裏が紫褐色なのでハラタケの仲間らしいと見当をつけて1本を持ち帰り、図鑑で調べたら、その通りだった。食菌だ。

ホタルを例に出すまでもない。風土が異なる以上は、同じいきものでも出現時期や開花時期が異なる。会津旅行から1週間後の16日には、いわきの芝山を訪ねた。夏井川渓谷ではピークを過ぎたヤマボウシが、ふもとの三和町上三坂では雪が積もったように花盛りだった=写真下。
  山並みの向こうとこちら側、川の上・中・下流域、あるいは渓谷林そのもの……。場所や標高の違いによってすむいきものが変わってくる。わかりやすいのが植物の分布だろう。観察を重ねることで、いつか、これは同じ、これは違う、といったこともわかってくる。そうすることで、さらに地域の環境や生活文化への理解が深まる。

人間と自然がかかわりあって生きている地域=風土はローカルなものだ。ローカルだからこそかけがえがない、という思いを新たにした6月でもある。もう半年が終わる。

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