車を走らせてすぐ、JR川前駅近くを流れる夏井川右岸のカツラと対面した=写真上。6月9日の日曜日に国指定天然記念物の「赤津のカツラ」(郡山市湖南町)を見たばかりだ。記憶が鮮明なうちに「川前のカツラ」と比較しておきたかった。やはり、「赤津のカツラ」の方が大きい。が、「川前のカツラ」もそれに近い迫力がある。
平田村の帰り、上三坂の芝山(819メートル)を訪ねた。目当てはシラカバ。シラカバと共生するベニテングタケが、梅雨を秋の長雨と勘違いして出ているかもしれない――勝手な期待がふくらむ。
阿武隈高地には、シラカバは自生しない。だからベニテングタケも見られない――愛菌家はそう考えていたが、偶然、ベニテングタケと出合った知人がいる。周囲をよく見たら、シラカバが十数本植えられていたという。植栽であってもシラカバがある以上は、ベニテングタケが出る可能性がある。
2016年8月、同級生4人でサハリン(樺太)を訪れ、オホーツク海側の道路を北上した。道の両側はシラカバの林だった。ベニテングタケの菌輪(フェアリーリング)を想像した。
いわき市内では、小川町の旧戸渡分校近く。道路際にシラカバが数本生えている。こちらは植栽されたものか。ベニテングタケは?5月では時季外れだった。
キノコが登場する文学や、東西のキノコ食文化の違いなどを調べている。最近は、朝ドラ「なつぞら」のオープニングが、キノココレクションに加わった。アニメに併せて主題歌が流れる。シラカバ林の中に女の子が座っている。一本のシラカバの根元にはベニテングタケが――。
それもあって、このごろは頭にベニテングタケが生えている。で、「川前のカツラ」に刺激されて、芝山―シラカバ―ベニテングタケの連想がはたらいた。
芝山のシラカバは頂上へと通じる道の途中にあった=写真下。何本か生えてはいるが、林を構成するような数ではない。ベニテングタケにとっては、しかし数は問題ではない。自生だろうと植栽だろうとかまわないはずだ。林床に赤い点々がないか目を凝らしたが、緑に覆われていてよくわからなかった。
キノコにも南方系、北方系がある。地域の自然と文化をキノコの視点で眺めると、いわきはいちだんと複雑玄妙で奥が深いことがわかる。北方系のベニテングタケは、いわきでは「憧れのキノコ」「幻のキノコ」だ。夏か秋、また芝山を訪ねて、シラカバの樹下に目を凝らそうと思う。
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