毎晩、タマネギの甘酢漬けを食べている。それを見て思いついた。ミョウガの子を縦に切ったら糠漬けがうまくいった。その延長でタマネギと一緒に漬けたらどうだろう。結果はオーライだった。
甘酢がしみてやわらかい。香味も失われていない。初秋の晩酌のおかずにふさわしい一品になった=写真。
ミョウガは年に2回食べられる。春のミョウガタケと、秋のミョウガの子と。どんな食べ方があるかを、前にブログに書いた。汁の実と薬味が一般的だ。
自分で簡単にできるものをと糠漬けにしたが、浸透圧がよくはたらかない。硬くて味もしみこまなかった。皮をむかないで入れたウドと同じだ。皮をむいたとたん、ウドはしんなりと漬かった。ミョウガも縦に四つに切って漬けたら、しんなりしていい味になった。独特の香りもそのままだ。
ただし、ミョウガの子はそれ自体小さい。糠漬けにすると取り出すまで時間がかかる。どこにあるかわからなくなるからだ。ネットの袋に入れると、簡単に取り出せるはずだが、まだ試してはいない。
甘酢漬けはどうも口に合いすぎる。カレーライスのときに食べるラッキョウがそうだ。晩酌のおかずにもなる。なかなか箸を休めない。スーパーへ行くと、つい買いたくなる。食べ過ぎるので、これだけはガマンする。
もうだいぶ前の話だ。知人からどっさり新タマネギをもらった。カミサンが甘酢漬けをつくった。以来、毎晩、甘酢漬けが出る。タマネギの白に、梅干しの赤い果肉をまぶすと彩りがよくなる。梅のクエン酸も食欲を刺激する。
今はそのために昔ながらの梅干しを買いに行く。梅、赤紫蘇(じそ)、塩、それだけでつくる梅干しだ。スーパーで売っているのは、かつお節風味の「かつお梅」、はちみつ入りの「はちみつ梅」が多い。私はなぜか、赤紫蘇のアントシアニンで美しく染まった梅にしか手が出ない。たぶん、それが「おふくろの味」だったからだ。
梅干しを食べたあとに赤い梅酢が残る。猛暑の夏は、氷を入れた水にこれを垂らして飲んだ。舌に触れたとたん、クエン酸で頭が覚醒したようにシャキッとする。見た目もいい。ただの水が「赤梅酢水(あかうめずすい)」とでも呼びたくなるような“清涼飲料水”に変わった。
昔の人はカネがない分、知恵をはたらかせた。土地に合った食べ物を生み出し、食べ方を工夫した。それが伝統野菜になり、伝統郷土食になった。新しい食べ物・食べ方はその文化を基礎にして、それぞれの家庭料理のなかに吸収され、同化していく。わが家にもやっとミョウガの糠漬けと甘酢漬けが加わった。
私は「風土はフードである」という語呂合わせを好んで使う。「フード(農作物・魚介類・鳥類・山菜・菌類、およびそれらを加工した食べ物)は風土(地域)によって生み出された。栽培(採取・捕獲)~加工(調理・保存)~摂取(消費)というサイクルの輪は小さく近接していればいるほど好ましい」(『いわき昔野菜のレシピ2』)からだ。
「おふくろの味」とか、お福分けとかに引かれ、食材と加工・調理に興味を抱くワケがどうやらここにある。
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