日曜日はいつもの魚屋さんへカツオの刺し身を買いに行く。ときどき、粗のおまけが付く。前は赤身のカツオ一本やりだったが、スズキやヒラメを知ってからは、白身の粗に引かれるようになった。
白身の粗は上品でさっぱりしている――そんなことを口にするものだから、店主もこのごろは、カツオではなく「スズキの粗あります」「ヒラメの粗あります」といってくれる。先日は「タイの粗あります、天然です」。「おお、それは、それは」と二つ返事でちょうだいした。
出刃包丁で短く断ち割られた脊椎骨(せきついこつ)や腹骨に身が付いている。カミサンがタマネギを加えて、醤油ベースの粗汁にした=写真上。白身系の粗だ、やはり上品な味だった。
おや、なんだ、これは? 身をほぐしているうちに、変わった骨が現れた。短い骨の中央が丸くふくらんでいる。中に真珠でも入っているのではないか、そう思わせるような形状だ。スズキやヒラメには、途中で球状になっている骨はない。
骨だから硬い。いわきのハマの先祖は縄文時代、マダイをよく食べていたそうだ。マダイを食べながら、変わった骨を眺めては、なにかに利用できないか、骨角器とか装飾品とかに――なんてことを考えたりしなかったか。
そんな妄想も含めて、なぜ骨に“こぶ”があるのか、ネットで検索した。いろいろおもしろいことがわかった。
「鯛(たい)の九つ道具」という言葉がある。主にマダイの持つ9種類の骨の総称だとか(コトバンク)。そのなかの一つ、「鳴門骨(なるとほね)」らしい=写真下。
鳴門骨は、正確には背骨とつながった血管棘(けっかんきょく)というもので、尾に近い方にある。流れが急な渦潮の鳴門海峡を泳ぐ大型のマダイにしかない、という話もあるようだから、とにかく珍しいのだろう。
としたら、めったに手に入らない天然の縁起物――そう気づいたときには、鳴門骨はすでに生ごみ容器(バケツ)に入っていた。
日曜日(9月5日)には用事があるので、土曜日の朝、雨がやんだすきに夏井川渓谷の隠居へ車を走らせた。キュウリを収穫したあと、畑のへりに生ごみを埋めた。そのとき、いくつもある小袋を破って、生ごみを広げては鳴門骨を探した。幸いすぐに見つかった。
水洗いして小瓶に入れて持ち帰る。骨の長さはざっと4センチ、“こぶ”の横幅は1.4センチと1.3センチ。粗汁の段階できれいに身をはがしているので、よけいな処理はしない。ガラスの小瓶に入れて、セミや甲虫のタマムシと同様、「生物コレクション」に加えることにした。
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