カミサンは「ヘビ」と聞いただけで飛び上がる。道に落ちている縄もヘビに見える。そのカミサンが夏井川渓谷の隠居でヘビの抜け殻を見つけた。
茶の間の隅、柱をはさんで長押(なげし)が交わる角から、抜け殻の一部がのぞいていた。「早く取って、どっかわからないところへ持って行って」。長押と壁の間にすき間ができている。長押から長押へとまたぎながら脱皮したのだろう。
イスに上がって抜け殻をつかむと、けっこう長い。尾の方は切れていたが、90センチ近い見事な抜け殻だった=写真。
隠居は、ふだんは人気がない。そのため、ときどきノネズミが臨時の居場所にしている。黒い粒状のフンが落ちているのでわかる。ネズミをえさに、どこからかヘビ(たぶんアオダイショウ)が侵入し、ついでに脱皮をした、といったところだろうか。
ヘビの抜け殻を見るのは、これで3度目だ。最初は9年前の平成24(2012)年7月。隠居の庭の木の枝におよそ1.5メートルの抜け殻が引っかかっていた。樹上で脱皮したのだろう。
2度目は翌25(2013)年9月下旬。20日未明、震度5強の地震が起きた。その1時間後、元草野美術ホールオーナーの草野健さんが95歳で亡くなった。告別式が9月24日、平で行われた。通夜の前日早朝、隠居の様子を見に行くと、玄関のたたきに蛇の抜け殻が落ちていた。それもアオダイショウだったように思う。
今回は頭部をじっくり観察できた。うろこのデザインが精緻で美しい。透明なプラスチックを思わせる質感だ。眼球の表面がそのままのかたちで残っている。ちょうど凸レンズのように光を反射していた。
目と目の間にある3枚のうろこは、中央が将棋の駒のようなかたちをしている。両脇の2枚は、それをひっくり返したように下が狭い。
頭部だけではない。胴体もそれぞれのかたちを保ちながらつながり、ヘビ特有のくねくねを伝達する仕組みになっているわけだ。
アオダイショウは農家や米屋の守り神だ。米を食い荒らすネズミを退治してくれる。カミサンはそういうふうに親から言われ、実際に家でアオダイショウを見ながら育った(はずなのだが)。
「ヘビの抜け殻を財布に入れておくと金運がよくなる」ともいわれる。よくなったためしはないが、なんとなく前に向かっていくエネルギーがわくような気はする。
わが家の神棚に「へびのぬけがら」とかかれた紙箱がある。下の子が小学生のころ、どこからか拾ってきたのを入れていた。ありがたがって神棚に供えて置いたら、中身がバラバラになっていた。茶色い粉末状のものが少しあるだけだった。分解してしまったのだろう。
今度も「生物コレクション」としてどこかに保管しておきたいのだが、そして金運アップを期待したいのだが、カミサンが許さない。見るのも触るのも、ましてやどこにあるか分かっているのもイヤ、と言っている。いい保管場所がないものか思案中だ。
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