2021年9月18日土曜日

瓶の宅配牛乳

        
 週に2回、2本ずつ瓶の牛乳が宅配される=写真。先日、瓶による製造が中止される、ほかの瓶の牛乳に切り替える、よければそのまま継続を――という内容の「お知らせ」が牛乳箱に入っていた。いつもの2本のほかに、見本の1本もあった。

 本社が郡山市の「酪王牛乳」を宅配で飲むようになった経緯はよく覚えていない。最初はいわき市に本社のある「岡田牛乳」を飲んでいたのではなかったか。牛乳業界の再編・統合といった事情が影響して、岡田牛乳が「あぶくま牛乳」になり、やがて酪王牛乳に切り替わった。手短にいえば、そういうことではなかったか。

 東日本大震災と原発事故が起きるとすぐ、福島県内各地でしぼりたての牛乳の廃棄処分が行われた。そんなニュースが今も記憶に残る。一方で、米もそうだが、検査して安全が確認されたものだけが出荷されている。牛乳も同じだ。宅配をやめたことはない。

「お知らせ」が入った直後、NHKがローカルニュースで瓶の酪王牛乳が9月いっぱいでなくなることを報じていた。銭湯で湯上がりにコーヒー牛乳を飲む、お決まりのポーズをとったあと、記者が経緯をレポートした。

県紙の記事なども参考にすると、瓶商品は宅配と自販機が主力だが、原発事故後、首都圏を中心に販売不振が続いた。コロナ禍で自販機のある銭湯や温泉施設などが営業を休止した。さらに、老朽化した製造ラインを更新するには多額の投資が必要だが、更新しても採算は見込めない。そういったことが重なって、瓶による牛乳製造の終了を決めたという。

 ときどき昼にコンビニからサンドイッチと牛乳を買ってくる。酪王のコーヒー牛乳(紙パック)があれば、必ずそれにする。コーヒー牛乳といえば酪王、それが若いときから頭に刷り込まれている。

 私は、浜通りと中通りの分水嶺、阿武隈高地の西側で生まれ育った。大きくは郡山の経済圏だ。向こうではどこでも「酪王」に出合った。浜通りで目にするようになったのは、コンビニができてからではなかったか。味はもちろんだが、「懐かしさ」意識も手伝って、サンドイッチには酪王のコーヒー牛乳、これが私の中で定番化した。

 きのう(9月17日)、会津から高速バスでやって来た後輩を、いわき駅前へ迎えに行った。一緒に昼でも、と思ったが、すでにすませたという。途中、コンビニに寄って、サンドイッチと酪王のコーヒー牛乳を買い、わが家で食べながら近況を報告し合った。

 すると突然、後輩がコーヒー牛乳を見ながら、酪王の話を始めた。なんと、夫婦で朝、瓶の酪王牛乳を宅配しているのだという。

牛乳といえば瓶、それが当たり前の世代だ。瓶の牛乳が消えるというので、ここ一両日、酪王の情報を求めてネットを渡り歩いていた。「瓶でなきゃダメだという人がいる」。それでお得意さんも減ったという話に、「なるほど」とうずきながらも、暗澹とした思いになった。

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