フェイスブックにいろんな「グループ」がある。私は「きのこ部」や「山菜きのこを採って(撮って)食べる会」などに加わっている。毎日、さまざまな写真と情報がアップされる。
キノコについていえば、何がいつごろ発生するのか――ほぼリアルタイムで知ることができる。といっても、場所は日本のどこか、あるいは南半球や北半球のどこか、だ。
大げさにいえば、地球規模の視野で自分の足元、つまりはいわきのキノコの生態を考えることになる。そこがSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス=会員制交流サイト)のおもしろいところだ。
私は、今は夏井川渓谷の隠居の庭をキノコのフィールドにしている。東日本大震災と原発事故が起きる前は、渓谷の森全体がフィールドだった。谷に沿って巡り、あるいは尾根へと急斜面を這いあがった。
放射線量の問題が起きてからは森を巡るのをやめ、たまに対岸へ渡ってキノコに出合っても、写真を撮るだけにしている。
そうしたなかで、隠居の庭の除染が行われた。新しい土になってからは、食菌に出合えばありがたく採取する。
春はシダレザクラの樹下にアミガサタケが発生する。梅雨どきには地表にマメダンゴ(ツチグリ幼菌)が現れる。それを地中にあるうちに採る。秋はモミの木の根元にアカモミタケが、立ち枯れの木にヒラタケが出る。
きのう(9月26日)、後輩が早朝から隠居の庭の草刈りをしてくれた。私はこの日、昔野菜の「三春ネギ」のうねに土を寄せ、苗床をつくった。合間に、昔野菜の「小白井きゅうり」と市販のキュウリを摘んだ。たぶん、これが最後。渓谷の住人は最後に収穫した物を「終わり初物」と呼ぶ。花をつけたミョウガの子も終わり初物だ。
昼食をはさんで、後輩は下の庭の草を刈り、私は上の庭を巡ってキノコを探した。道路に面した庭木のなかにモミがある。根元にアカモミタケが一つ、別のモミの根元にも同じくアカモミタケが一つ生えていた。
やっと出たか、という思いになったが、これはむしろ走りのアカモミタケだろう。つまりは、初物。過去の記録の通りなら、10月に群生する(はずだ)。
アカモミタケは、震災前の記憶では庭に発生することはなかった。今思えば、発生に気づかなかっただけかもしれない。
「モリオ・メグル氏」を自称していたころは、庭に生えるキノコにはあまり関心がなかった。原発事故が森から人間を遠ざけた。その代償行動として隠居の庭を森に見立てるようになったのだろう。
アカモミタケ自身からいいダシが出る。炒め物もいいが、わずか2個しかない。ここは吸い物にして味わうことにする。
秋の初物と夏の終わり初物と=写真。いよいよ土いじりも、夏から秋・冬に合わせたものに切り替わる。当面の楽しみは、モミの木の根元に目を凝らすこと。そして、三春ネギの収穫をいつ始めるか、指折り数えること。
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