2021年9月25日土曜日

「REVISIT」展

                               
    REVISIT(リビジット)=再訪・再考だという。なにを再訪・再考するのか。いわき市立美術館がどういう経過をたどって誕生したか――それを振り返る企画展のようだ。

「REVISIT――コレクション+アーカイブに見る美術館のキセキ」展が10月1日から24日まで、いわき市立美術館で開かれる。

 当初は9月11日~10月24日の予定だったが、コロナ禍の「感染拡大防止一斉行動」に「まん延防止等重点措置」の期間延長が加わり、臨時休館が長引いて開催期間が延期・短縮された。

 企画展の関連行事として、若い人たちによるオープニングトーク「これからの地域とか、文化とか、アートとか」が10月2日に開かれる。翌3日の日曜日はクロストーク「いわきの文化と美術館を振り返る」で、佐々木吉晴前いわき市立美術館長と私が話す。

 先日、担当の学芸員Oさんから企画展の図録が郵送されてきた=写真。展示作品(抜粋)のほかに、今年(2021年)で開館38年目に入った同美術館の年表が収められている。

5年前(2016年)の秋、「いわきの現代美術の系譜」と題するシンポジウムが平・大町のアートスペースエリコーナで開かれた。6人の登壇者の1人として参加した。

 テーマは、市立美術館の建設へとつながった市民団体「いわき市民ギャラリー」の活動と、その推進力になった画家松田松雄の人と作品を振り返り、いわき現代美術黎明期の熱を次世代に伝えていく、というものだった。

「市民ギャラリー」がヘンリー・ムーアやロダンなどの一流の展覧会を誘致し、成功させる。それが行政を動かして、現代美術を主に収集するユニークな美術館の開館につながった。つまり、奇跡に次ぐ奇跡がうねりとなって美術館の建設という大波を生んだ、という軌跡。シンポジウムのテーマがそのまま「REVISIT」展に引き継がれた、といってもいいだろう。

 企画展のタイトルにある「キセキ」が片仮名なのは、この「軌跡」に「奇跡」の意味をもたせたからにちがいない。

私の役目は、図録にない市民ギャラリーと美術館の「前史」を語ることだと思っている。つまり、私自身も出入りする人間の一人だった草野美術ホールや喫茶店「珈琲門」について。そこで画家や詩人、書家、演劇人その他もろもろの人間が交わった。そのつながりがやがて「市民ギャラリー」を生むエネルギーになった、と私は思っている。

 5年前のシンポジウムや「市民ギャラリー」などをテーマにしたノンフィクション作品がある。「熱源~いわき市民ギャラリーとその時代」(木田修作)。第40回吉野せい賞準賞を受賞した。市内の同人誌「風舎」の第12号(平成30年3月発行)に載る。

もはやここに収められている記録の方が私の記憶より正確だ。クロストークを控えて「熱源」を読み直し、忘れていたあれこれを思い出している。

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