いわき市内の「ナラ枯れ」被害が急拡大している。国有林の被害は民有林の2.4倍近くに上る。磐城森林管理署は被害軽減を図るため、今年(2021年)から具体的な対策に乗り出した――。先日、いわき民報が報じた=写真。
ナラ枯れを媒介するのは体長5ミリほどの甲虫・カシノナガキクイムシ(カシナガ)で、ミズナラやコナラ、シイ・カシなどが被害に遭っている。
雌が病原菌やえさとなる酵母菌をたくわえる「菌嚢(きんのう)」を持っている。雄に誘われて大径木のコナラなどに穿入(せんにゅう)し、そこで産卵する。病原菌もなかで培養される。結果、木は通水機能を失い、あっという間に葉が枯れる。
カシナガの幼虫は孔道内で成長・越冬し、翌年6~8月、新成虫として一帯に散らばり、健全な木にアタックする。と、また山が「茶髪」になる。
いわきでは平成30(2018)年に初めて確認された。私が毎週日曜日、土いじりに通っている夏井川渓谷の森も、塩田(小川町)を中心にナラ枯れの茶髪が目立つ。
記事では、ナラ枯れに詳しい齊藤正一山形大客員教授の知見を紹介している。カシナガは1カップルから20個体、翌年はそれから200個体、5年後には2万個体と急激に繁殖する。30センチを超える古木がカシナガに侵入されると、半分ほどが枯死する。古木が増えたのは木炭の需要が減り、多くが放置されたため――。
燃料革命、つまりは人間と自然の関係が変化したことも、カシナガ繁殖に影響していた。
磐城森林管理署は齊藤客員教授の助言などを基に、「大量集積型おとり丸太法」を取り入れて、被害抑止対策を始めた。ナラの木を伐採し、生のまま丸太にして積み上げ、被害地域に置いてカシナガを誘引し、丸太のなかで幼虫が冬眠している間に燻蒸(くんじょう)処理をする、というものだ。すでにカシナガを確認しており、効果は表れているという。
ナラ枯れについては、何度かブログで書いた。いわき民報に転載された文章(夕刊発磐城蘭土紀行)を読んだ友人の娘さんから、「どうなっちゃうの、なんとかしなくちゃ」と心配する電話がかかってきた。
若い人が自分たちの住む周囲の山の異変に気づくのはいいことだ。関心が高まれば対策も進めやすい。電話がかかってきた時点ではわからなかったが、「なんとかしなくちゃ」の答えが「おとり丸太法」ということになる。
それともう一つ。かなりの木が枯死している。立ち枯れ木の幹が折れ、あるいは根返りをするのは5年ほどたってからだそうだ。記事には市のコメントが載っている。「経過観察の段階だが、道路など生活に支障が出る場合は伐倒などの対応を行うつもりだ」
渓谷を縫う県道小野四倉線沿いにもナラ枯れの大木が数本ある。ある朝、隠居へ行くときにはなんでもなかったのが、2時間後に通ったら、道路の片側を枯れ枝が覆っていた。これがナラ枯れの後遺症なのだと身がすくんだ。枝や幹の、突然の折損・落下がこれから間違いなく起きる。
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