2021年9月30日木曜日

渓谷の迂回路が復活

        
「令和元年東日本台風」で道路が損壊し、通行止めになってから1年11カ月。夏井川渓谷の江田と山を越えた横川を結ぶ母成(ぼなり)林道がやっと再開通した。

 同林道は、落石が絶えない渓谷の道路(県道小野四倉線)が通行止めになったときの、左岸唯一の迂(う)回路だ。東日本大震災のときにはこの迂回路が機能していたため、平市街から国道399号を利用して二ツ箭山のふもとを通り、横川から江田に入って渓谷の隠居へ行くことができた。

 令和元年の台風19号では、県道も、母成林道もダメージを受けた。県道はなんとかすぐ通れるようになった。林道は――。

「母成林道の奥に行ったらハゲ山だった。“山抜け”が心配だ」。台風襲来の1年半前、地元住民が懸念していたような事態になった

渓谷に友人夫妻が住む。台風19号の直後、街の旧宅から帰るのに、途中で県道をUターンし、国道399号まで戻って母成林道に入った。

そのときの様子――。皆伐された山側から沢へとガンガン水が流れていた。その水がアスファルト路面から滝のように落ち、アスファルトが沢に崩れていったという。

 江田の林道入り口には通行止めの看板が立った。その林道が先日、再開通したことを、やはり友人のフェイスブックで知った。日曜日(9月26日)、隠居からの帰り、母成林道~広域農道を利用して草野の魚屋へ直行した。

私が母成林道を通るのは、台風19号襲来直前の日曜日以来だ。友人が伝えていた通り、皆伐された沢の近くの護岸が復旧していた=写真。皆伐された山肌はこの2年間で草に覆われたが、路面自体は折損木が散乱し、開けたところでは生い茂った草が車に「うらめしや~」をしていた。

道路中央にたまった土の帯が、生えた草で緑色になっている。これなどは2年間、車の通行が止まっていたあかしのようなものだろう。

道路も住家と同じで、使い続けていれば傷んだところは補修が行われる。使わなければそのまま荒れ果てる。

こういうときにいつも思い出す言葉がある。「自然は寂しい/しかし人の手が加わると暖かくなる」(民俗学者宮本常一)。農村や山村の景観は、人間が自然にはたらきかけることで維持されているのだ。

 夏井川渓谷は両岸に沢が連続する。小川エリアでは左岸・県道、JR磐越東線の山側に4カ所ほど、土石流の危険個所がある。わが隠居は「下の沢地区」の土砂災害警戒区域に引っかかり、友人宅は同特別警戒区域内に含まれる。

 それはしかし、人家や農地があるから線が引かれているのであって、人が住んでいないところでも(それが多いのだが)、土石流発生の危険は常にある。

迂回路の復活が教えるのは、温暖化による気象災害の激甚化だ。だからこそ自然が発する声を聞きのがしてはいけない、ということなのだろう。

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