2021年12月11日土曜日

カラスのいかだ下り

                      
 樋口広芳さんといえば、日本を代表する鳥類学者の一人だ。その人の新刊本が図書館にあった。『ニュースなカラス、観察奮闘記』(文一総合出版、2021年)。

 公園の水飲み場の栓をひねって水を飲む・浴びる、クルミを車にひかせて割る、針金ハンガーを巣の材料に使う……。人間が目撃したカラスの突拍子もない行動の数々を、観察と見聞、メディアのニュースを織り交ぜてつづっている。

 カラスは単なるバードウオッチングの対象種ではない。わが家の前にごみ集積所がある。ときどき、ごみ袋を破って生ごみを食い散らかす。人間の暮らしの場では衛生と美観を損ねる厄介者だ。

この「翼を持った隣人」にスキを突かれないようにするにはどうしたらいいか。まずはその生態を知ることだ。図書館の新着図書コーナーにカラスの本が並ぶとすぐ借りて読む。

今度の本では、石鹸やろうそくの持ち去りを知った。これらには油脂分が含まれている。それが目当てで、貯食しておいて「おやつ」としてかじるのだとか。

6年前の7月、近所にある故義伯父の家の庭のクスノキを剪定した。カラスが営巣していたので、子育てが終わるまで待った。古巣には針金ハンガーが4~5本組み込まれていた=写真上1。

カラスは電信柱にも営巣する。停電の原因になるので、電力会社はカラス除けを設置する。わが家の近所にあるのは黒いお玉のような風車で、風を受けると回転する。

ある日の早朝、街へ用があって出かけた。信号待ちをしていると、電柱の上でくるくる回りながら、朝日を浴びて光る「お玉」があった=写真上2。これも風車式鳥害防止器だろう。

最近では、爆弾低気圧が通過したあとの12月1日昼前、夏井川の堤防から珍風景を二つ目撃した。

堤防のそばの家の庭木に黄色い実が生っている。ユズかミカンかははっきりしない。それをくわえてハシブトガラスが飛び立とうとしていた=写真上3。

目を転じて増水した川を見ると、木片のかたまりが流れていく。その上にカラスが4羽=写真上4。「なんだ、なんだ、『いかだ下り』か」。しばらく行くと、1羽が飽きて飛び立った。これもハシブトだったかもしれない。

カラスはいつもこちらの想像を超えた動きをする。憎らしいときがあるが、遊び心いっぱいのカラスのふるまいを見ると、愛おしくさえなる。

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