2021年12月17日金曜日

冬のキノコ

                      
  東日本大震災と原発事故のあと、食べるキノコが変わった。野生キノコは摂取も出荷もできない。その代用というべきか、ほぼ毎日、豆腐と栽培ナメコの味噌汁を口にする。

スーパーや道の駅へ行くと、必ずナメコを買う。傘ができたばかりの幼菌よりは、成菌に近いものを選ぶ。大粒ではカットする必要がある。そのまま汁に加えられるよう、中粒が定番になった。

小粒だけでなく中粒も出回るようになったのはいつからか。最初から二つが店頭に並んでいた記憶はない。震災後ではなかったか。

夏井川渓谷の隠居では、平成25(2013)年初冬に庭の全面除染が行われた。表土を5センチはぎとり、山砂が一面に投入された。庭の一角にあった菜園も消え、学校の校庭のようになった。翌春、菜園を再開した。

三春ネギだけは根が土中にあるので、同23、24年と初夏に種を採った。秋に天地返しをして苗床をつくり、種をまいて栽培を続けた。原発事故に負けたくないという思いもあった。

同25年は除染が決まっていたので、秋の種まきは中止した。乾燥剤とともに小瓶に種を入れて、翌年秋まで冷蔵庫で眠らせた。

 いつもなら半年弱のあとにまかれる種が、足かけ2年、実質1年半弱休眠していたことになる。発芽率は低かったが、なんとか三春ネギが復活した。

それとは別に、除染後、庭に発生する食菌はありがたくいただくようにしている。シダレザクラの樹下のアミガサタケ(春)、モミの樹下のアカモミタケ(秋)、立ち枯れの木のヒラタケ(冬)・アラゲキクラゲ(随時)などだ。

梅雨期のマメダンゴ(ツチグリ幼菌)は震災前から採取していた。たぶん除染後も菌糸が残っていたのだろう。

ヒラタケは主に晩秋から初冬にかけて発生する。震災前は森を巡ってよく採った。ところが、平成20(2008)年、初めて異変に気づいた。大きくしっかりした個体のひだに白い粒々ができていた。「ヒラタケ白こぶ病」だった。

森林総合研究所によると、白こぶ病にかかったヒラタケには、病原センチュウのヒラタケシラコブセンチュウと、媒介昆虫であるナミトモナガキノコバエの幼虫が生息している。温暖化で媒介昆虫が北上してきたようだ。

隠居の庭のヒラタケもときどき、白こぶ病にかかる。去年(2020年)もそうだった。今年も11月に発生したヒラタケに白こぶが付いていた。

知り合いが若い夫妻を連れて来た。男性はアメリカ人で、日本語が堪能だ。草野心平を研究している。奥さんは日本人でキノコに興味がある。

奥さんとキノコの話になり、立ち枯れの木を見ると、ヒラタケが生えていた。さっそくご主人が隠居にあった柄の長い小鎌でヒラタケを切り取ると、ひだに「白こぶ」ができていた。その旨を説明し、「標本」としてプレゼントした。

それからおよそ1カ月後、また同じ立ち枯れの木からヒラタケが発生した=写真。裏はきれいだった。

いちおう塩水に一晩つけてから、てんぷらにした。小柄だが肉厚で、かむとシャキシャキして弾力がある。久しぶりに天然ヒラタケの味を楽しんだ。

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