2021年12月2日木曜日

「爆弾低気圧」

                      
 真夜中から雨音が激しくなった。風も強まった。夜が明けると、土砂降り。「バケツをひっくり返したような」というたとえがあるが、そんなものでは足りない。家が滝に打たれているようだった。

 11月30日夜から12月1日朝にかけて、いわき地方は大雨と強風に見舞われた。テレビが「爆弾低気圧」という言葉を使っていた。確かに、並みの低気圧ではなかった。

 朝9時前、スマホが突然、アラーム音を発した。見出しにいわき市内郷の「宮川流域に避難指示(警戒レベル4)発令」とあった。

 すぐパソコンを開いて、「川の水位情報」と福島地方気象台のホームページで、今のいわきの空と川の状況を確かめる。これを、雨がやむまで何度か繰り返した。

 朝の大雨の影響で、義弟が利用しているデイケアの車の到着が遅れた。迎えに来たスタッフが「平六小近くの道路が冠水していた」という。

雨がやんで西から青空が見えるようになった午前10時過ぎ、街へ行くついでに六小前の田んぼ道を通った。

急カーブに差しかかると、「神谷耕土」といわれる水田の一部が冠水していた=写真上。前方、道路わきで何人かが小さな水門のハンドルを回している。その先の路面には落ち葉が散乱していた。

夕方、もう一度、現場を見た。水門が開いて、水が田んぼの方へ勢いよく流れている。かたわらには落ち葉が入ったバッグが3つ=写真下。すごい量の落ち葉が山側の水路を流れてきて詰まり、水が道路を越えて田んぼに入り込んだのだろう。

田んぼと接する道路ののり面が一部えぐられていた。この損壊が激しくなると、道路そのものが壊れてしまう。

神谷耕土は近くの山裾を縫う「磐城小川江筋」から水を引いている。見渡す限り田んぼだから、いろんなところから水路が延びているにちがいない。冠水した場所では、道路の下を通って水が流れるようになっているのだろう。

この「爆弾低気圧」は、川でいえば本流より支流、そのまた支流といった、人間の暮らしと身近なところで被害をもたらした。「庭がほっちゃくられた」という人がいた。これが、地面を落ち葉が覆う冬の、バケツではなく滝のような豪雨の怖さだ。

街へ行った帰り、いつものように夏井川の堤防を通った。「令和元年東日本台風」の復旧と国土強靭化対策として、河川敷の立木伐採と堆積土砂の除去が進められている(小川町ではこの豪雨で一時、作業員3人が中州に取り残されたという)。

新川との合流部から下流、増水した河川敷の岸辺にウとハクチョウが避難していた。小さな木が次々に流れていく。いかだのようになった竹木類の上ではカラスが止まって流れ下るのを楽しんでいる、そんな光景が見られた。

夕方も夏井川の堤防を通った。河口まで行ったら、夏井川がやっと、広く太平洋とつながっていた。が、やはり海の波の力は強い。分厚い砂の壁が水のすぐ下に見えた。

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