中2の孫が来たとき、カミサンが本のリストを見せた。「読みたい本があればプレゼントするよ」。何冊か選んだらしい。
注文した本(小説)が書店から届いた。眞邊明人著『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(サンマーク出版)=写真。奥付を見ると、今年(2021年)3月初版発行で、7月ですでに第9刷とある。
歴史に興味を持っているようなので、タイトルに徳川家康とあったから選んだのか、あるいは本そのものを知っていたのか、そのへんはわからない。
本の表紙にある文字だけで内容をなぞると、2020年、新型コロナの初期対応を誤った日本の首相官邸でクラスターが発生し、総理が感染して死亡する。
混乱の極みに陥った政府は、AIとホログラムによって偉人たちを復活させ、最強内閣をつくる。内閣は迅速な意思決定で日本初のロックダウン、50万円給付、リモート万博など、大胆な改革と事業を次々に実行する――。
そもそものきっかけは、毎月、カミサンに届く読書推進運動協議会の会報「読書推進運動」だ。会報に本のリストが載っていた。
本が届くと、一気にページを繰った。徳川家康内閣の主な閣僚はというと、官房長官が坂本龍馬、以下、財務大臣豊臣秀吉、経産大臣織田信長、外務大臣足利義満、農水大臣徳川吉宗など。
ざっと読んだ印象でいうと、このままでは国が立ちゆかなくなる、今こそ国のしくみを変えねばならぬ――そういったことをテーマにした小説のようだ。
私はこの本を知らなかった。たまたま書店から本が届く何日か前、全国紙に4段二つ割りの大きな広告が載った。カミサンに教えられて目に止めた。
新聞は1週間分まとめて、山奥で養鶏を営む知人に回す。一種のリサイクルで、本が手に入ったときには、広告の載った新聞は知人に渡したあとだった。
図書館へ行って新聞広告を読み直す。本の帯には「10万部突破」とあるが、新聞広告では「11万部突破」になっていた。ものすごい勢いで読まれていることがわかる。
江戸から明治に変わった時点で「廃藩置県」が行われる。その前にも、いろんな「仕組み」の改革が行われた。なかでも、江戸時代には鎖国による「パックス・トクガワーナ(太平の徳川)」が実現した。どうやらこれがポストコロナの「指針」になるようだ。
最終部、ホログラム再生装置を使った日米首脳会談が印象深い。富は有限、欲は無限。その矛盾に人は苦しむ。コロナがグローバル経済のもろさをあぶりだした。家康はそれを踏まえて大統領にたたみかける。
「統治者とはすなわち、すべての者を満たさず、そして、すべての者を欠かさず。それをおのれの信念にて行う者をいう」「自由と不自由、それと折り合いをつけるのが貴殿の仕事である。矛盾は人でなければ乗り越えられぬ。機械では答えは出ぬのじゃ」
首脳会談後の記者会見で家康が行った演説がいい。「成長という病」への戒めとして、この「ビジネス小説」を読んだ。
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