2021年12月1日水曜日

野菜とドレッシング

                     
 知人からサニーレタスが届いた。有機無農薬で栽培したものだという。晩酌のおかずの一品として、ドレッシングだけのサラダになって出てきた=写真。

 採りたてなのでみずみずしい。隅々にまで水分が行き渡っている。口にした瞬間、それがわかる。歯ごたえのよさと同時に、ドレッシングの甘みとほのかな酸味、風味がからまって、思わずうなった。「うまい!」

ドレッシングは、店では売っていない。いわきの元シェフが製造し、月に1回宅配する数量限定商品だ。わが家では何人か分をまとめて扱っている。鶏卵や納豆も同じ。契約した人が取りに来る。こちらから届けることもある。

ドレッシングの商品名は「分離液状ドレッシング」、原材料は「食用植物性油脂、穀物酢、玉ネギ、ニンジン、砂糖、食塩、ニンニク、胡椒(こしょう)」と、ボトルのラベルにある。使うときにはボトルを逆さにして、シャカシャカやる。それで油分と水分がほどよく混じり合う。

前に、元シェフとカミサンが話しているのを耳にしたことがある。「新玉ネギを使っているのでサラッとしています。お客さんのなかには『とろみ』が少ないという人もいます」。手づくりのオリジナルドレッシングだから、同じ原材料でも季節によって微妙に味が変わるのだろう。

 東京から来た人が、このドレッシングサラダを食べてうなったことがある。カツオの刺し身に舌鼓を打ち、地元のシェフがつくった「昔きゅうりのピクルス」を絶賛したこともある。

それで思い出した。いわき昔野菜の小豆「むすめきたか」を使ったいわき遠野らぱん(遠野町)の水ようかん、これをツアーでいわきへ来た人たちに進呈した。小瓶だから、値段も安い。いわきには、伝統に根差した新しいスイーツもあるんですよ――と伝えたかったのだ。

さて、サニーレタスからほどなく、再びドレッシングサラダが出た。ちぎったサニーレタスと大根の千切りが入っていた。

大根は収穫したばかりのものをもらった。これもサニーレタス同様、パクパク口に入る。みずみずしくてやわらかい。容器の底に残ったドレッシングも胃の中に収める。こちらは「特製ジュース」だ。

有機無農薬で栽培されたニンジンを買ってきて、マヨネーズをつけて食べたことがある。甘くてやわらかかった。今度はこれを千切りにして、ドレッシングで食べてみようか。三春ネギはどうか、軒下のパセリは、大根の葉は――ドレッシングの魔法にかかると、とめどがなくなる。

直売所を巡ったり、お福分けが届いたりして、新鮮な食材を生のまま食べる機会が少なくない。もちろん、ドレッシングの力もあるのだろうが、新鮮だとこんなにうまいのか、という驚きに似た気分を味わっている。

東京までドレッシングを送る量はないが、客人が東京から来たときにおみやげ代わりに持たせてやるくらいのことはできる。これも、いわきの味。

 このところ、孫のような世代がつくった「世界の今とこれから」を見すえた本を読んでいるせいか、情報はグローバルに、食べ物はローカルに――といった思いが強い。

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