きょう(1月16日)未明に突然、防災ラジオが鳴った。津波注意報が出た、海岸付近からすぐ避難を――。トンガ諸島の海底火山が噴火し、その影響で津波が日本にも到達した。小名浜港では70センチの津波を観測したという。11年前のあのときを思い出して心がざわついた。ということを前置きにして本題へ――。
サイズはほぼ新書大。表紙には森の中で少年が何かを拾っているような絵。総合図書館の新着図書コーナーに、アナ・マリア・マトゥーテ/宇野和美訳『小鳥たち――マトゥーテ短編選』(東宣出版、2021年)=写真=があった。もしかしたらキノコが出てくるかもしれない。とっさにそんな期待がわいて借りた。
21の短編が収められている。1編1編はたしかに短い。が、作品によっては最後にどんでん返しが待っている。
作者のマトゥーテ(1925~2014年)は、20世紀スペインを代表する作家のひとりだそうだ。
「そこで描かれている現実は、おそらく苛酷で悲しく、死が身近にあり、時に目をそむけたくなるくらい痛ましい。だが、マトゥーテは同情や感傷や甘さをさしはさまず、判断をくだすこともなく、淡々とそれを描く」(訳者あとがき)
たとえば、最初の作品「幸福」。村に医師が着任する。宿屋はない。役場の職員に案内されて、気がふれているとうわさされている女性の家で最初の夜を過ごす。
医師は女性の息子の部屋に案内される。息子の話になる。息子はおじのところで靴屋見習いをしているという。「クリスマスに帰ってきたら、会ってくださいね」
翌朝、医師を迎えに来た職員が、下宿先を確保したことを伝える。と、医師はすっかりこの家が気に入ったらしく、「わたしはどこにも行きませんよ」。
役場の職員は理由を聞いて、切なげに告げる。「息子さんはいないのですよ」。病気で「もう四年も前に死んだのです」。
本のタイトルにもなった「小鳥たち」は、主人公の女の子と森番の息子の夢のような物語だが、息子もまたこの世にはいない。「木の上から落ちて頭が割れちまったのさ」
この短編選はどうやら児童文学の範疇に入るらしい。図書館の分類では、「一般・その他の国の文学」になっているが、本には「はじめて出逢う世界のおはなし」と銘打ってある。そのシリーズの1冊だ。
キノコは残念ながら、ざっと読んだかぎりではどこにも出てこない。ま、そんなものだろう――自分を慰めていたら、フェイスブックの「きのこ部」というグループに、キノコが登場するテレビアニメ「錆喰いビスコ」が紹介されていた。1月10日、読売テレビやBS11などで放送が始まったばかりだという。
どんなふうにキノコが使われているのだろう。ここは原作に当たるのが一番だ。総合図書館に瘤久保慎司『錆喰いビスコ』(KADOKAWA)が7巻まである。1巻は「貸出中」なので、とりあえず2、3巻を借りてきた。
こちらは「ティーンズ文庫」。つまり、中・高生向けのライトノベルだ。表紙のイラストからしてアニメっぽい。
ときどき科学ではなく、文学の森で「キノコ狩り」をしたくなる。『小鳥たち』では出合わなかったが、ネットの森で『錆喰いビスコ』に遭遇した。キノコが介在しなければ、目に触れることもなかった本だ。これからじっくり読む。
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