啄木は自分の手をじっと見て、「生活(くらし)楽にならざり」と嘆いた。私はこのごろ、日曜日ごとに食べる刺し身を見て、つい海水温の高さを考えてしまう。
カツオの刺し身が好きで、行きつけの魚屋にあれば必ず買う。シーズン外でも、魚屋の店主が市場から仕入れると、声がかかる。それで、1月からカツ刺しを食べることもある。
去年(2021年)もそうだった。カツオには終わりがなかった。いつもなら10月後半~11月前半あたりに、カツ刺しからサンマ、ヒラメ、その他の刺し身に切り替わるのだが……。
「海水温が高いので、まだまだいけます」。師走に入ってもカツ刺しを食べた。さすがに12月19日はカツオが切れて、白身の刺し身にした=写真上1。が、翌週にはまたカツオが入った。カミサンは「マダイも」という。舌に白身の味が残っていたのだろう。で、両方の盛り合わせにしてもらった。
白身の刺し身はヒラメ、マダイ、そしてホタテの貝柱。タチウオも入荷したといっていたから、盛り合わせの一部に入っていたかもしれない。
まだ暑さが残る秋のある日曜日、シイラが丸ごと1匹、店頭においてあった。三枚におろすところだったのだろう。「シイラは南の魚、これも入荷するようになったんです」
カツオにも、サンマにも旬がある。しかし、気候変動が海にも及び、「潮目の海」にも異変が見られるようになった。
シイラを見たころの、店主の話――。急な寒気に震えそうになったころ、「海水温はそうすぐには下がりません」。
温暖化で浜通りの海でも伊勢エビやトラフグが獲れるようになった。半面、サンマやサケ、タラの不漁が続いた。
トラフグの話のついでに、フグ毒についても教えてくれた。あとで厚労省のホームページにも当たった。
トラフグは筋肉(身)・皮・精巣(白子)とも食べられる。肝臓・卵巣・腸はダメ。マフグ(成魚)は筋肉・精巣はOKで、皮はダメ。マフグの幼魚は皮だけでなく精巣もダメだという。
さらに検索を続けると、トラフグとマフグのハイブリッド種らしいものがいることもわかった。となると、皮は?
伊勢エビにしろ、トラフグにしろ、わが家の食卓には無縁の高級食材だ。フグは、食べなければ毒の心配もない。
夏井川のサケはどうだったのだろう。今季、わが生活圏の夏井川に捕獲のための簗場(やなば)ができたのは10月に入ってからだった。いつもより半月ほど遅かった。
年末には早くも漁が終わったらしく、簗場の両端がなくなっていた=写真上2。サケの南下が遅れ気味なことはニュースで知ったが、川への回帰そのものも少なかったのだろうか。
何かが得られるときには何かが失われる――。気候変動の怖さ・恐ろしさを、このごろ肌で感じる。
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