師走後半から先日まで、ときどき晩酌のつまみに干し柿が出た=写真。カミサンの知り合いからのお福分けだ。
若いころ、四倉町の知人の家を訪ねたら、干し柿の話になった。知人の家では正月、冷凍しておいた干し柿を食べる。干し柿にも「ハレ」と「ケ」があるのかと驚いた。干し柿が出ると、決まってこのエピソードを思い出す。
もらった干し柿には、外側も中も軟らかいもの、外側だけが硬いものと二つのタイプがあった。一口かじると、なんともいえない甘みが口の中に広がる。どちらのタイプもそこは変わらない。
わが家の庭の木の主役は渋柿。一度だけ実を収穫し、皮をむいて軒下につるしたことがある。ちゃんと干し柿になったかどうか、記憶があいまいだ。たぶん、あらかたはカビがはえたか、ヒヨドリにつつかれたのだろう。
近所の故義伯父の家には甘柿がある。家を新築したときに義弟が苗木を買って植えた。「桃栗三年柿八年」。実が生(な)り始めてからは、庭の渋柿は鳥にまかせ、こちらが晩酌のつまみに替わった。
生食が一番だが、一斉に生るので食べきれない。とろとろになった実は皮と種を取り、タッパーに入れて冷凍した。渋柿で試したのを応用した。
渋柿も熟せば甘くなる。熟柿は中がとろとろなので、凍らせることを思いついた。それをブログに書くと、既に実行している知人が「100パーセントの柿シャーベット、旨いですよ」とコメントを寄せた。
以来、甘柿を摘んでは自然に熟すのを待ってシャーベットをつくる。「かき氷」ならぬ「柿氷」だ。
夏井川渓谷の隠居の近くに放置された柿の木がある。小粒の実が生る。普通の渋柿よりは小さいが、豆柿よりは大きい。
カミサンが少しいただいて、皮をむかずに3個ずつ、焼き鳥用の竹串を刺して家の軒下につるした。11月から12月、そして1月。柿色が消えて黒茶色に変わった。
不思議なことに鳥は近寄らない、と思っていたら、ある日、竹串3本のうち1本が地面に落ちていた。
ヒヨドリでもやってきて、柿をつついているうちにひもから竹串が外れたのだろう。見ると、皮に小さな穴が開いて、中身が少しなくなっている。皮をつついた跡もある。
ではと、土曜日(1月29日)の夜、1個を晩酌のつまみにした。ほんの一かじりしたら……。饐(す)えたにおいと酸味が広がった。すぐ吐き出して、水で口をすすいだ。
ちょうど6年前のきょう(1月31日)、この柿の木のことをブログに書いた。1月10日に見たときには、まだいっぱい実が残っていた。人間は柿の実の写真を撮るだけ。たまたま離れたところから望遠で柿の実を撮影していたら、エナガの群れが現れた。ちょこまかと動き回って柿の実をつついていた。
ほぼ3週間後に見ると、朱色の点々が消えていた。みごとに黒ずんだ柿の皮しか残っていない。厳寒期に入って、いよいよエサが乏しくなった。しかたない、まずいけど食べるか――野鳥もそんな気持ちだったのではないか。
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