元日は静かに過ごす。といっても、三度の食事がある。カミサンがつくる雑煮とは別に、白菜漬けを甕から取り出し、刻んで食卓に出すことから新年が始まった。
11月下旬に漬けた白菜は食塩過剰だった。食べるときには水につけて塩出しをした。まだ寒気が緩い。しみ出た水の表面が白くなる。この産膜酵母を抑えるために塩分を多めにしなくては――それが裏目に出た。
食塩が適量だと、漬けて1週間もたてばなじんでくる。白菜もしんなりして、株元の甘みが舌を喜ばせる。
これがなかった。塩は塩のまま。それで、食べるときには水につけて塩を抜いた。そうなると、ほかのうまみ成分もしみ出てしまうのか、水っぽくなってしまった。
ほぼ1カ月後。また三和町の「ふれあい市場」から白菜を買ってきた。息子がもらってきた白菜もある。2回目はこの二つを漬けることにした。
まずは八つ割りにして軒下で干す。今までは、朝干したら夕方には漬ける、を実行していたが、用事が入って2日ほど軒下に置きっぱなしにした。
ま、それでもまだ水分は残っている。必要な材料(ユズの皮のみじん、唐辛子、昆布)を用意して漬け込んだ。
前回の失敗を教訓に、塩分は前年までと同じ分量にした。いちいちカップでは量らない。塩梅を手が覚えている。葉を開いてサッと振る。前回は1回でいいところを、ときどき2回振った。それが過剰だった。
水が上がるのに少し時間がかかった。量も少ない。それでも浸透圧がはたらいて、時間とともに白菜がしんなりしてきた。まあまあだった。塩出しをする必要はない。
白菜は冬になると糖分を増す。白く厚い株元がいちだんと甘く感じられた。急な寒気の到来で、産膜酵母も張るのが遅れた。とりあえず正月まで白菜漬けが持ったことをよしとしよう。
となると、あとは糠床だ。いつもだと、白菜漬けを始めると同時に、糠床に食塩のふとんをかけて冬眠させるのだが、最初の白菜漬けが失敗したためにずるずるきてしまった。
2004年ごろに最初の糠床をつくった。東日本大震災に伴う原発事故で9日ほど避難したとき、表面に青カビが生えた。たまたまこの年は冬も糠漬けを食べた。カビの部分だけ取り除くと再生したが、2014年の真夏に異変がおきてダメにした。
今の糠床は2代目だ。初代は10年、2代目は7年。代々受け継がれてきた糠床ではないが、わが家のなかでは唯一、歴史を重ねている“お宝”でもある。
目覚めている以上は毎朝、糠床をかき回してやらないといけない。糠床に手を差し込むとひんやりする。これがこたえる。いっそ大根でも漬けるかと思うのだが、白菜漬けがあるので、糠漬けは余ってしまう。
古い暦から新しい暦に変わるのに合わせ、ぎりぎり大みそかになって食塩のふとんをかけた。しばらく糠床の冷たさからは解放される。
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