2022年6月10日金曜日

値上げ許容度って

        
  故義伯父の家の庭にあるホタルブクロが開花した=写真。カミサンが何本か切って茶の間に飾ったら、いつの間にか花がしぼんで小さくなった。

 ホタルブクロの花だけではない。年金生活者も気持ちが急にしぼんだ。おととい(6月8日)夕方、日本年金機構から「年金額改定通知書」が届いた。昨年度から0.4%の減額になるという。昨年度も0.1%の減額だった。

 平成28(2016)年に“年金カット法”ができて、現役世代の賃金下落に連動させる仕組みになった――。同日朝、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で作家の盛田隆二さんがつぶやいていたので、心の準備はしていたのだが…。

 「ぼんやりとした不安」が、こうして一つひとつ具体的になっていく。物価が上がる、現役世代の賃金が下がる、それに連動して年金も、となれば、消費に回すカネは減る。

 そうしたなかで、黒田東彦(はるひこ)日銀総裁が「家計の値上げ許容度も高まってきている」と発言して批判を浴びた。

 日銀の見立てでは、新型コロナウイルスによる外出制限などで消費に使えず、半ば強制的に貯蓄された所得が増えている。これが使われるようになると経済が回り、賃金がアップする。そういう文脈の中で「値上げ許容度も高まってきている」発言が出たのだとか(朝日新聞)。

 しかし、高所得世帯はともかく、低所得世帯には貯蓄に回す余裕がない。物価上昇による負担感さえ増している。これに触れずに、強制貯蓄の増加だけを根拠にした「説明のまずさ」が大きな批判につながったと、新聞は伝える。

 黒田さんは元「キャリア官僚」だ。東大法学部から大蔵省(現財務省)に入り、イギリスのオックスフォード大学に留学したあと、28歳でいわき税務署長になった。

昭和47(1972)年7月31日付のいわき民報「人」欄に「28歳、若さあふれる署長さん」の記事が載る。

書き出しの数行。「『陽気に楽しく』いわき税務署長になった黒田さんのことである。そのとおり底抜けに明るい。二十代という若さもあろう。が、やはり人柄。署内に新鮮さと明るさを与えている」

いわき時代はわずか1年だったが、その後も順調にキャリアを積み、財務官を最後に退職したあとは、アジア開発銀行総裁に就き、さらに平成25(2013)年からは日銀総裁を務めている。

いわき時代の黒田さんを取材したことはない。が、財務官としてメディアに名前が出るようになったとき、「20代でいわきの税務署長になった、4歳年上のあの人かな」という直感がはたらいた。そうだった。

キャリア官僚がどう出世の階段を上っていくのか。その始まりが留学だったり、税務署長だったりするという点では、黒田さんは典型的なエリートだ。以後、メディアに登場する黒田さんを、いわき時代とからめてウオッチする癖がついた。

半世紀前の「人」欄には新婚1カ月とあった。そのころは夫婦でスーパーへ買い物に行ったことだろう。庶民の暮らしも肌で感じていたことだろう。発言撤回のニュースを受けて、なぜかいわき時代の黒田さんを思わずにはいられなかった。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

貴方しか書けない記事ですね!