5月31日付のブログで残留コハクチョウの「エレン」が、いわき市小川町三島地内の夏井川から姿を消したことを書いた。
日曜日の同29日。エレンの世話をしている「白鳥おばさん」のSさんから、夕方、電話があった。5月27日の大水で流された、平窪まで見に行ったがいなかった――。
平窪は、夏井川下流域で最初にハクチョウの越冬地になったところだ。飛来するハクチョウが増えて、小川の三島が第二の越冬地になり、やがて平窪から大水で流された残留コハクチョウが呼び水になって、平・塩~中神谷に第三の越冬地ができた。
電話があったその日、私も夏井川渓谷にある隠居へ行くときにエレンの姿が見えないのに気づいた。どうしたんだろう。帰りも確かめたが、やはり姿はなかった。
それから6日たった土曜日(6月4日)の朝10時過ぎ、Sさんから電話がかかってきた。三島からざっと2.5キロ下流、夏井川右岸にJAの梨選果場がある。「『選果場の裏にいる』という連絡をもらった」という。
Sさんは、エレンを三島に戻せないかといっていたが、私にも知恵はない。とにかくエレンが無事だったことにホッとする。Sさんもそれは同じだろう。
あとで、グーグルアースで場所を確かめる。左岸は下小川の水田地帯、右岸は丘陵が迫る西小川だ。
西小川は竹を中心にした岸辺林が続く。そばを県道小川赤井平腺と並行して磐越東線が走っている。小川町出身の詩人草野心平が書いた詩「故郷の入口」が思い浮かぶ。
昭和17(1942)年10月、心平は中国・南京から一時帰国し、その足で帰省する。冒頭4行。「たうとう磐城平に着いた。/いままで見なかったガソリンカーが待ってゐる。/四年前まではなかったガソリンカーだ。/小川郷行ガソリンカーだ。」
赤井駅を発車したあと、赤井と小川の境の切り通しが近づく。それを抜けると、西小川の竹林が目に入る。「切り割だ。/いつもと同じだ。/長い竹藪。/いつもと同じだ。」
この詩にある「長い竹藪」が小川郷駅の近くまで続く。その最下流あたりにエレンがいることになる。
きのう(6月5日)の日曜日、渓谷の隠居へ行った帰り、下小川の水田地帯にある堤防沿いのあぜ道を利用して、夏井川左岸の堤防に立った。
そこは平市街の下流、わが生活圏と違って、堤防を車で往来することはできない。堤防のそばまで車で行って、あとは歩いて確かめるしかない。
堤防の上に出ると、双眼鏡で見るまでもなかった。選果場のやや下流、水辺にエレンがたたずんでいた=写真。
ここでも河川敷の堆積土砂の撤去、立木伐採が行われている。というより、これから本格化するようだ。
平日は、工事が行われるので人の立ち入りはできない。工事がなくても立ち入りが難しい環境にある。Sさんも、ここまではえさやりには来られないといっていた。さてどうしたものだろう。エレンが自力で三島に戻るのを祈るしかないのか。
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