2022年6月2日木曜日

異国の植物園のよう


 いわき駅の東方、イトーヨーカドー平店が解体されて更地になった。JR常磐線わきの2階建て駐車場も消えて、長ひょろい裸地ができた。

 駅前の総合図書館へ行くのに、ロープで仕切られた駐車場跡地を見ながら通る。大きな緑のかたまりが点々と生長して数を増してきた。一目見ただけで外来の植物だとわかる。

 おととい(5月31日)、街へ行った帰りにこの植物を撮影した=写真。夏井川渓谷の隠居の近く、JR磐越東線と並走する県道小野四倉線の道端に生えていた植物と同じだ。

 この植物は、肉厚で毛深い大きな葉を地べたに広げて越冬し、夏に1メートル以上も花茎をのばして先端部分に黄色い小花をいっぱい付ける。

 セイタカアワダチソウみたいに群生するわけではない。渓谷ではそこに1本、たまたま日当たりのいいスポットがあって活着しただけ、といった生え方だ。

 結局、なんという名の植物かはわからなかった。その植物が、ポッカリできた市街地の裸地を占領するように出現した。ここは名前を突き止めないと……。

 「葉が大きく分厚い/背が高い/草』で検索すると、「ビロードモウズイカ」が出てきた。画像はまさしく渓谷で見たものと一致する。

で、ここからはビロードモウズイカということで話を進める。ビロードモウズイカが市街地の更地に突如、発生したわけは?

 ウィキペディアなどによると、ビロードモウズイカはゴマノハ科モウズイカ属で、ヨーロッパや北アメリカなどが原産だ。

 日当たりのよい、攪乱された土壌を好むという。駐車場が消えて裸地化したばかりのそこは、まさにビロードモウズイカが発芽するにはうってつけの場所ではないか。

 見た目は爆発的な繁殖力と映るが、ほかの植物の陰に入ると耐性がない、耕起されると生き延びられない、というわけで、農作物には大した害はないらしい。

 種子は10年以上、時に100年以上もの間、発芽能力を保つそうだ。山火事になってほかの植物が消えた焼け跡に、突如、ビロードモウズイカが芽生えるという。駐車場跡地での大量発生も、原理的には同じだろう。

 2年生植物だそうだから、分厚い葉のロゼットで冬を越し、春になって生長を始め、花茎をのばして黄色い小花を咲かせるところまできた。

 まるでどこか外国の砂漠のような雰囲気、ないしは異国の植物園、そう「ビロードモウズイカ園」にまぎれこんだような錯覚に陥る。

 ヨーカドー跡地にはおよそ2年後、複合商業施設が開業する。駅寄りの交差点がラウンドアバウト(環状交差点)に変わり、今ある道路は線路側に移って施設を周回するようになる。

 つまり、異国の植物園のような光景は一時的なものだ。裸地は再びアスファルトやコンクリートで覆われる。 

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