12日間の休館を頭において、日曜日(6月12日)に本を3冊借りた。1冊は月刊の雑誌「ユリイカ」だ。
図書館の雑誌は、次号が出るまでは館内閲覧のみで、貸し出しはしない。雑誌コーナーを見ると、ユリイカのボックスには最新号が掲示されていた。
5月号は? ボックスの中にあった。借りられる。といっても14日間だから、特別整理期間が過ぎたら、すぐ返さないといけない。
借りて貸出期限票を見ると、返却予定日が7月8日になっている。14日プラス特別整理期間の12日ではないか。ほぼ1カ月近く手元における。
同誌は文学や思想などを扱う芸術総合誌だが、2022年5月号ではなぜか「菌類の世界――きのこ・カビ・酵母」を特集している=写真。
菌類研究は自然科学の範疇に入る。菌類の代表ともいうべきキノコは、しかし、「食」や「毒」、あるいは「色」や「形」の多様性から、文学・美術その他さまざまなジャンルと絡めて論じられることが多い。それを、私は勝手に「文化菌類学」と呼んでいる。
「ユリイカ」の菌類特集も、おそらくは文化菌類学的な発想から生まれたにちがいない。陸上植物の約8割の植物種と菌類は共生関係を結んでいる。菌と植物の共生である菌根が地球の緑を支えている――。菌類学の最新の知見も影響していることだろう。
発行元の青土社のホームページに、特集を組んだ意図が記されていた。かみくだいていうと、こんな感じだろうか。
キノコが文化的、文学的であることはすでに知られている。そのキノコを含む菌類は広大無辺にこの世界を取り巻いている。繁茂し続ける菌類の織り成す網目に分け入り、南方熊楠やジョン・ケージ、ビアトリス・ポターらの営為をたどり直してみる――。
まずはパラッと目を通す。小見出しに小説1・きのこ目を啓(ひら)く・きのこと仲間たち・マンガ・菌類としての大地・終わりなき生命・食の菌類学・きのこはうたう・きのこのエクリチュール・詩……、とある。
冒頭のキノコ小説は「きの旅」。高原英理というキノコ作家を初めて知った。キノコ研究家でもある作曲家ジョン・ケージと親交のあった武満徹を取り上げた、高山花子の「雨の樹とキノコの庭」という文章もある。
文化菌類学的なエピソードが満載の特集だが、なかでも石川伸一「菌類と『食べる』ということ」には、キノコを食べる話だけでなく、死後、キノコに食べられる話も出てくる。
故人の葬り方には火葬、土葬、水葬、鳥葬のほかに樹木葬、宇宙葬などがある。アメリカではキノコの胞子を植えつけた「きのこスーツ」を着て埋葬された俳優がいる。オランダではキノコの菌糸体を原料にした「生きた棺」が開発された。
環境問題が深刻化する中、「きのこ葬」もやがて普通に行われるようになる?というところで、きょうは終わりにしよう。またなにか“発見”があれば報告したい。
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