もうかなり前になる。BS日テレで毎日午後、「オスマン帝国外伝――愛と欲望のハレム」を見た。カミサンがそばで見ているうちに、だんだん権力と人間の愛憎劇に引き込まれていった。
ドラマでは、16世紀、オスマン帝国の黄金時代を築いた皇帝スレイマンと、元キリスト教徒の奴隷身分から皇帝の寵愛(ちょうあい)を受け、やがて正式な后(きさき)となったヒュッレムを軸に、骨肉の後継争いが展開された。
ヒュッレムは黒海の北、今のウクライナ西部の町で生まれた。クリミア・ハン国の襲撃に遭い、奴隷として黒海の南、オスマン帝国の首都イスタンブールに連れてこられた。
「魔性の女」、あるいは「西太后やマリー・アントワネットとならぶ悪女」と評されるが、ウクライナでは人気が高い。
このテレビドラマの影響だろう、トルコを軸にして近隣のロシアや東欧、中東を見る癖がついた。そこへロシアによるウクライナ侵攻が始まった。ときどき、トルコからウクライナを見るような感覚になった。
それだけではない。これもテレビドラマの影響には違いない。カミサンがトルコ料理の本を買い込んだ。
夏に「インゲンのオリーブ油煮」というのが出てきた。カミサンが移動図書館から、荻野恭子著『世界三大料理の魅惑のレシピ 改訂版家庭で作れるトルコ料理』(河出書房新社、2020年)を借りた。そこにあったという。
夏野菜のお福分けが相次いだころだ。キュウリのトルコ料理はと見れば、「羊飼いのサラダ」があった。トマトとキュウリ、ピーマン、玉ネギを「さいの目」に切り、ドレッシング(レモン汁、塩、こしょう、オリーブ油)を加えてよく和(あ)える、というものだった。これもオリーブ油が決め手らしい。
やがてカミサンがこの本を買って、ときどき、トルコ風の料理をつくるようになった。なにしろ、トルコ料理はフランス料理と中国料理とともに、世界三大料理の一つだという。
で、最近出てきたのが、「ジャジュック――ヨーグルトときゅうりの飲むサラダ」=写真。前述の料理本によると、キュウリは粗みじんにし、ニンニク1片をすりおろしてヨーグルトに入れる。そこにハーブとオリーブ油を加える――簡単にいうと、そんな感じの冷製スープだ。
と、早朝、ここまで入力していたところに、BSプレミアムで9時から「味覚の迷宮トルコ」が始まった。2時間、手を休めて視聴した。いやあ、世界三大料理の一つだけに奥が深い。カミサンの本をあらためてじっくり読んでみようという思いになった。
それはそれとして、ジャジュック(テレビの番組では「ジャジュク)は周辺の国にもある。キプロスは同じく「ジャジュック」だが、ギリシャは「ザジキ」、ブルガリアは「タラトル」、インドは「ライタ」、イラン(ペルシャ)は「マストヒャール」。
キュウリ、ニンニクおろし、ヨーグルト(ウクライナはクリームサワー?)――これらを基本にした「飲むサラダ」がユーラシアには広く浸透しているらしい。
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