2022年9月7日水曜日

「疫病退散」護符

                                
   福島県歴史資料館(福島市)から、定期的に広報資料が届く。4カ月に一度、2・6・10月に発行される「福島県史料情報」に、いわき関係の資料が紹介されることもある。

5年余り前には「佐竹永海が描いた磐城産のマンボウ」の記事が載った。拙ブログでそれを紹介した。

――嘉永3(1850)年、国学者山崎美成(よししげ)が5巻5冊の随筆集『提醒紀談』を刊行する。挿絵の多くは、会津生まれで彦根藩の御用絵師佐竹永海(1803~74年)が描いた。その一つに、マンボウの外形と皮をはいで肉や内臓を描いた「牛魚全図」がある。「牛魚」はマンボウのことだ。

 マンボウは、ほかに「満方」「満方魚」「万寶」と表記され、「ウキキ」と呼ばれて「浮亀」「浮木」などとも書かれたという。見出し以外に「磐城産」の文字は出てこないが、江戸時代、マンボウといえば磐城産で通っていたのだろう――。

今度は、同館収蔵資料展「疫病に負けるな! ふくしまの近世・近代疫病史」の開催告知チラシが届いた=写真。9月3日に始まった。展示替えをしながら12月11日まで続く。

新型コロナ感染症の流行は、疫病(伝染病・感染症)対策について再考する契機となり、かつての疫病への対応にも注目が集まった。主に江戸・明治時代の疫病に由来する資料を取り上げ、ふくしまに流行した疫病や、伝存している疫病関係資料を通して、人々がどのように疫病と向き合い、乗り越えてきたかを振り返る――というのが開催趣旨だ。

チラシの構成がなかなかしゃれている。表の左側に、「疫病退散」のお札が3枚連なっている。

上から「神蛇魚(じんじゃうお)之圖」「元三大師(がんざんだいし)札」「疫病はらふ符」で、幅はざっと4センチ、長さは9.5センチほど。

これを切り取って家の戸口や床の間の柱に張ったら、ご利益があるかもしれない、そんなことを思わせるつくりになっている。

ふくしまに限らず、どこに住んでも先祖たちは疫病に苦しめられた。それを鎮めるために神仏に祈願した。

その図像が印象深い。神蛇魚は「アマビエ」を連想させる。長い髪を垂らした人面で、頭には枝分かれした角が2本、魚のような体の上半身には蛇のうろこが描かれ、ヒレは剣のようにとがっている。

元三大師符は、現存した名僧の化身だという。比叡山延暦寺の「中興の祖」良源で、どこかユーモラスな鬼の姿に引かれる。

世に疫病がはやり、人々が苦しんでいたとき、これを救おうと、良源は大きな鏡に自分の姿を映し、静かに瞑想に入った。すると、鏡の中に骨ばかりの鬼の姿が現れたため、その姿を弟子に描き写させ、版木に刻んで刷って配ると、護符を戸口に張った家は災厄から免れた、という伝説に由来する。

そして、最後の疫病はらふ符。漢字と絵文字、人の顔の絵などを組み合わせたもので、いろいろ検索しているうちに陰陽道がらみの護符だということが分かった。呪符の世界をちょっとのぞいてみようかな――そんな気になった。

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