いわき市の青少年育成大会が先日、2年ぶりに開かれた。地域の育成市民会議に関係しているので出席した。
前半は、少年の主張県大会への出場候補者2人(中学3年生)が意見を発表した。後半は、医療創生大の鎌田真理子教授が「県内の子どもたちの状況と支援」と題して講演した=写真。
鎌田さんは①東日本大震災から11年を経た大人たちと子どもたち②新型コロナ禍での子ども③ヤングケアラーの現状と支援――について話した。
あとで厚労省のホームページをのぞくと、一般論として「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」をヤングケアラーという、とあった。
ケアの中身は①障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている②家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている③障がいや病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている――だけではない。
④目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている⑤日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳している⑥家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている――ケーズもある。
さらに、⑦アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している⑧がん・難病・精神疾患など慢性的病気の家族の看病をしている⑨障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている⑩障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている――子どももいるという。
これらを頭に入れて、講演を振り返る。鎌田さんはいわきの例を引き合いに、学校や福祉などが連携して支援するうえでの課題や工夫などに触れた。
さらに、ヤングケアラーが生み出されやすい構造として、ひとり親が多い・経済的困窮を抱えている・家族が介護するのは当然とみなす風潮がある・障がいや疾病への差別、偏見が家庭内で介護を自己完結させている、などがあることを紹介した。
私たちも子どものころは買い物や清掃、食事の片付けなどをした。高度経済成長期の前で、親は夜遅くまで仕事をしていた。経済的には楽でなかった。そのため、子どもたちが家事を分担した。
その経験を尺度にするのは間違っているのだろう。三世代家族が普通だった時代から核家族の時代に移り、さらにひとり親が増えただけでなく、非正規雇用が主流になる、といった厳しい社会・経済環境に変わった。
私たち地域社会の人間はどうすればいいのか。鎌田さんは地域の人間は子供の日常を知り、その変化に気づきうる存在として、行政や民生委員などへの連絡と継続的な見守りを、と訴えた。
結論は山上憶良の歌に尽きるという。「銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむに
まされる宝 子にしかめやも」。なるほど、これほど説得力のある言葉もない。子どもは地域の宝。
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