2022年9月22日木曜日

女王の国葬中継

3連休が終わると、秋の彼岸に入った。夏井川渓谷の隠居では秋の花、ハギが咲いている=写真。きのう(9月21日)は長袖を引っ張り出した。急に寒さが降りてきた。

「敬老の日」の月曜日(9月19日)、イギリスではウエストミンスター寺院でエリザベス女王の国葬が行われた。

同日午後6時からNHKのBS1が、イギリスのBBCの国葬生中継を放送した。2時間の長丁場だった。こういうときはカミサンがチャンネル権を持つ。こちらは黙ってライブを見続けるしかない。

 テレビを介してとはいえ、同寺院の内部を見るのは初めてだ。さまざまな角度から「現場」を切り取って見せる編集の力が作用したのか、交差する建物の構造に興味がわいた。

天井、いや「天上」からの画像に切り替わるたび、同寺院の平面図が頭に描かれる。十字形。縦に長い空間と、横に短い空間が交差している。「これって、十字架じゃないの?」。カミサンに聞くともなく聞くと、「なんかそう見える」。

 なぜかそのとき、いわきの現代美術家吉田重信さんが、東日本大震災のあとに手がけた「光の鳥」プロジェクトを思い出した。

 一例が、吉田さんが制作した「光の鳥」の絵はがきに、自分へ、あるいは肉親へ、友人へあてて自由にメッセージや絵を書き込む取り組みだ。

それらを展覧会で展示したあと、実行委が切手を張って「飛ばす」(投函する)、という仕組みになっていた。

震災の年の9月から11月にかけて、5000枚を目標に、最低でも3000枚の「光の鳥」を飛ばす計画だと、本人から聞いたことがある。

これを受けて、カミサンが旧知の校長さんがいる小学校へお願いに行ったら、快諾してくれた。そのうえ、別の小学校も紹介してくれた。

この「光の鳥」プロジェクトとウエストミンスター寺院の内部のつくりが重なった。「祈り」のかたちがそうさせたのだろうか。

同寺院の内部はなぜ「十字形」なのか、ネットで検索すると、縦に長い空間は「身廊(しんろう)」、横に短い空間は「翼廊(よくろう)」ということが分かった。

身廊はキリスト教聖堂内部の、中央の細長い広間の部分(デジタル大辞泉)、翼廊は「バシリカ」という建物様式の聖堂における十字形平面の両腕部のこと(ブリタニカ国際大百科事典)――だそうだ。

身廊と翼廊が組み合わさって荘厳な空間が演出される。天上から見ると、それが十字形になっている。

「光の鳥」の頭と翼を角張ったものにすると、クルス(十字架)になる。逆に、クルスの両腕と頭を曲線にすると光の鳥になる。

 イギリスの国葬から聖堂のつくりへ、光の鳥へ――。思考が飛んだあとには、寒々しい現実が待っていた。 

0 件のコメント: