わが家では朝、庭へ出ると、駐車スペースから柿の木の下に広がるミョウガの“やぶ”をのぞく。地面にミョウガの子がある。花が咲いているのでわかる。
“やぶ”の花までの距離はわずか2メートル。“やぶ”に入り込めば簡単にミョウガの子を摘むことができるのだが……。
半そで・半ズボンでは、たちまちヤブカに襲われる。長ズボンにはき替え、蚊取り線香を持って“やぶ”に分け入る、というのも面倒だ。
8月に初物を摘んで食べて以来、庭からの収穫はカミサンにまかせている。カミサンはミョウガの子を摘むたびに、「キンカン、キンカン」と駆け込む。いよいよ私はミョウガの根元をのぞくだけになる。
さいわい、お福分けがいっぱい届いた。汁の実や薬味にした。それでも余る。タマネギの甘酢漬けを食べていて思いついた。ミョウガの子を縦に切ってタマネギと一緒に漬けたらどうだろう。
カミサンに頼むと、結果はオーライだった。甘酢がしみてやわらかい。香味も失われていない。初秋の晩酌のおかずにふさわしい一品になった。たまたまタマネギが切れたので、そうした。
古い画像を整理していてわかった。去年(2021年)の今ごろ、ミョウガの子を縦に割ってガーゼに包み、糠漬けにしている=写真。
最初は自分で簡単にできるものをと、そのまま糠漬けにしたが、浸透圧がよくはたらかない。硬くて味もしみこまなかった。
皮をむかないで入れたウドと同じだ。皮をむいたとたん、ウドはしんなりと漬かった。ミョウガも縦に切って漬けたら、しんなりしていい味になった。
独特の香りもそのままだ。ただし、ミョウガの子はそれ自体小さい。割って糠漬けにすると取り出すまで時間がかかる。どこにあるかわからなくなるので、ガーゼにくるんで糠床に入れることを思いついた。正解だった。
ところで、と思う。ミョウガを食べると物忘れをするという話は、確か小学生のころ、昔話の一つとして学校で習った覚えがある。欲の深い宿屋が泊まり客にミョウガをいっぱい食べさせ、財布を忘れさせようとするのだが、かえって自分たちが宿代を取るのを忘れてしまう。
以来、ミョウガには距離感が生まれた。とはいえ、大人になると昔話の解釈が変わった。うまいので食べすぎるな、そんな戒めなのだろう、と。
要は、酒を飲むようになって、ミョウガのうまさを知って、昔話の呪縛から解放されたのだった。
甘酢漬けは、あるとき、知人からどっさり新タマネギをもらったのがきっかけで、カミサンがつくるようになった。
タマネギの白に、梅干しの赤い果肉をまぶすと彩りがよくなる。梅のクエン酸も食欲を刺激する。今はそのために昔ながらの梅干しを買いに行く。その応用編として、毎晩、ミョウガの「甘梅酢漬け」を食べている。
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