9月前半の日曜日、湯本温泉街に用があったので、夏井川渓谷の隠居を早めに出た。平地に下りて国道49号を山に向かい、途中、左折して有機無農薬栽培の直売所「生木葉」=好間=に寄った。
野菜がほとんど売り切れたなかで、「フィンガーライム」と書かれた小さな果実があった。黒っぽい緑色をしていて、形状はまさしく小指、フィンガーだ=写真。その晩、さっそく切って水割りのグラスに加えた。いかにも柑橘系らしい香りがした。
しかし、それだけではほんとうにフィンガーライムを味わったことにはならないらしい。中に詰まっている小さな粒々をかむと、果汁がはじけてやわらかい酸味と香りが広がる。フィンガーライムはこれを楽しむものだった。
フィンガーライムとはどういうものか、ネットで検索すると――。原産はオーストラリアで、先住民のアボリジニが古くからジャムなどにして食べていた果実だという。
オーストラリア東部のクイーンズランド州南東部からニューサウスウェールズ州北部にかけての、乾燥した熱帯雨林地域が産地だとか。
クイーンズランド州のタウンズビル市は、いわき市と国際姉妹都市を締結している。タウンズビルを訪問した市民はフィンガーライムを口にしたかもしれない。
そのオーストラリア原産の果実がなぜ生木葉に? 「レストランから頼まれた」のだという。生木葉は市民だけでなく、プロのシェフからも人気がある。シェフの要望にこたえて栽培を始めた、ということなのだろう。
低木だが、枝はつる状に伸びてブッシュ状態になる。そのうえ、細い枝にはトゲがいっぱい付いている。収穫が大変なようだ。
グラスにポンと入れたときには、「森のキャビア」といわれている意味がよくわかっていなかった。
フィンガーライムの解説に「サジョウが魚卵のように粒々になっている」というのがあった。これも水割りに使った時点では、意味がわからなかった。
このブログを書くために再度調べて、フィンガーライムの食材としての扱い方を間違っていたことを知った。
サジョウって何?から始めるしかない。ミカンでいえば、果肉を構成している粒々のことだそうだ。この粒々がフィンガーライムでは「魚卵」のようになっている。この粒々をかむと、先に書いたように酸味と香りが口中に広がる。「森のキャビア」といわれるゆえんだ。
「畑のキャビア」というのもある。これは通称「とんぶり」、ホウキグサの実で、新婚旅行で盛岡市へ行ったとき、披露宴にも出席した画家の故松田松雄と盛岡の画廊でばったり会い、その晩、居酒屋「茶の間」へ案内されて食べた。
今度、生木葉へ行ったときに「森のキャビア」があったら、ちゃんと中の粒々をかんで酸味と香りを楽しもうと思う。
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