「疫病に負けるな!」展の告知チラシを見て以来、疫病退散の護符の絵や文字が気になって、それを解説する本を図書館から借りて読んでいる。
同展は福島県歴史資料館で12月11日まで開かれている。「ふくしまの近世・近代疫病史」というのがサブタイトルだ。
チラシの表面に3枚の護符が印刷されている。「神蛇魚(じんじゃうお)之圖」「元三大師(がんざんだいし)札」「疫病はらふ符」で、これらについては先日、拙ブログで紹介した。
その延長で、「疫病はらふ符」のような、文字とも記号ともつかない護符がなぜ生まれたのか、頭から離れなくなった。
まずは大東流柔術師範の大宮司朗著『実践講座1 呪術・霊符の秘儀秘伝』(ビイング・ネット・プレス)に目を通す。
文字のような、記号のような謎の護符についてはこうあった。「多くの霊符には、文字とも思えぬ文字や妙な記号が一体となったデザインがほどこされています」
われわれのような「普通の人にはなにを意味するのかさっぱり分かりませんが、たとえば道教では、霊符の起源を神仙(道教で崇められる神や仙人)が天地自然の真象を写しとったものとしています」。
宗教学者の島田裕巳著『疫病退散――日本の護符ベスト10』(サイゾー)=写真=は、コロナ禍が始まった令和2(2020年)秋に出版された。
道教や陰陽道といった分野の知識はまったくない。が、「急急如律令(きゅうきゅうのりつりょう)」は漢字なので読める。護符理解の入り口になるかもしれない。
島田本によれば、「蘇民将来子孫家之門」と記された護符の裏に「急急如律令」と記される。歌舞伎の「勧進帳」にも出てくる。もともとは陰陽師が悪鬼を退散させるために唱えた呪文だという。「蘇民将来」は古代説話に登場する人物だが、よくわかっていない。
それに合わせて「九字(くじ)の真言」を唱えることもあるそうだ。九字とは、島田本に紹介されている資料では「臨・兵(びょう)・闘・者(しゃ)・皆(かい)・陳(ぢん)・裂・在・前(ぜん)」であり、大宮本では「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・前・行(こう)」である。
「陳」は「陣」、「裂」は「烈」に変わり、最後の2文字も「在・前」、あるいは「前・行」と同じではない。いろんなパターンがあるのだろう。
九字の真言を唱えながら指で縦横交互に空を切る。「刀印(とういん)」というそうだ。やってみて、遠い昔に熱中した猿飛佐助や霧隠才蔵を思い出した。
まず、右手の人さし指と中指を伸ばし、親指で曲げた薬指と小指を押さえる。左手も同じようにする。それから左手の指の輪に右手の2本の指を差し込む。右手が刀、左手が鞘というイメージだ。九字を切ったあとは、また刀を鞘に収めるようにして印を解く。
なるほど。60年以上も前の小学生の遊びといえば、忍者ごっこだった。その原点がこれだったか。
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