キノコは雨と気温の影響を受けやすい。東北南部は今年(2022年)、あっという間に梅雨が明けた――と思ったら、戻り梅雨のような天気になった。梅雨キノコは遅れて出てきたのではないか。
仙台管区気象台は当初、東北南部は6月15日に梅雨入りし、同29日に明けたと、「速報値」を発表した。わずか14日間、しかも6月中に明けるのは観測史上初めてだった。
その後、気象庁が「確定値」を発表し、東北南部は梅雨入りが6月6日、梅雨明けは特定できない、と修正した。
新聞によると、東北南部は6月下旬に高気圧に覆われた。7月に入ると、今度は寒気や低気圧の影響で雨が多くなり、さらに8月上~中旬も前線や低気圧、湿った空気の影響を受けた。
確定値を読むかぎり、前半(6月)はカラ梅雨、後半(7月)は8月も含めてジメジメした天気だったことがわかる。
夏井川渓谷は天然キノコの宝庫だ。そこに隠居がある。東日本大震災に伴う原発事故が起きるまでは、森を巡ってキノコの写真を撮り、食菌を採った。
今はほとんど森を巡ることをしない。全面除染された隠居の庭に目を凝らすだけだ。ヒラタケやアラゲキクラゲの生える立ち枯れの木がある。日曜日、隠居に着くと必ずチェックする。9月も後半に入ると、道路との境にあるモミの木の根元にアカモミタケが発生する。
9月に入ったことだし……。庭でキノコのチェックを始めたら、思わぬ菌に出合った。先日、キジバトらしい鳥が猛禽の餌食(えじき)になった話を書いた。
その羽根がかたまって落ちていたすぐそばに、筆のようなキノコが群生していた=写真。普通のキノコとはまるで形状が違っている。これまで見てきた異様なキノコでいえば、長い爪を3本伸ばしたようなサンコタケ、赤いヒトデのような腕を何本も突き出したアカイカタケに近い。
帰宅して画像と図鑑を照合すると、スッポンタケ科のキツネノロウソクかキツネノタイマツに似ている。
キツネノロウソクは柄の上部が濃紅色で、下部が白いという記述はない。キツネノタイマツは柄の上部が淡紅色~淡橙黄色で、下部は白色とある。
似たキノコにキツネノエフデがある。これは柄と傘がつながっている。消去法でここは仮にキツネノタイマツということにする。
傘は胞子を含む腐敗臭の強い暗緑色のグレバ(消えかかっている)に覆われている。SNS(会員制交流サイト)で同じ仲間のキヌガサタケが虫に食われてきれいになくなる動画を見たが、やはりキツネノタイマツもそうして虫を呼び、食われて胞子を拡散するのだろう。1週間後には跡形もなくなっていた。
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