主催は市と同賞運営委員会で、運営委員長、同課の課長とともに、私も会見に臨む。5人の選考委員を代表して、受賞作品の選評と総評を述べる。今年(2022年)は10月11日に行われた。
同賞には正賞(せい賞)、準賞、奨励賞がある。今回は半澤りつさん(好間)の小説「辿(たど)り道」が準賞に入った。奨励賞は春乃礼奈さん(平)の小説「夫の羽」と、伊藤均さん(同)の小説「人間模様」の2遍で、正賞は残念ながら該当作品がなかった。
中学生以下を対象にした青少年特別賞には2編が選ばれた。中学3年武藤梨愛(りあ)さん(錦)の小説「開幕ベルが鳴ったら」と、同2年米澤咲(さくら)さん(内郷)の小説「届かない声」で、中学生からの応募増を反映する形で複数受賞となった。
8月中~下旬のおよそ2週間、一日に2~3編、集中して作品を読んだ。ちゃんと換算したことはないが、何十万という文字を目で追う作業だ。
ただただ疲れる年もあるが、今年は読むのが楽しかった。楽しいと疲労はそんなに感じない。めったにない経験だ。正賞はなかったが、全体的にレベルが高かったということができる。
11月5日にいわき市立草野心平記念文学館で表彰式が行われる。そこでも選評と総評を述べる。それで今年の選考委員の仕事が終わる。
表彰式のあとに開かれる記念講演は欠かさず聴いている。今年は仙台市在住の作家佐伯一麦さんだ=写真(チラシ)。想像と現実が交錯したような作風が好きで、震災前は一時、集中して読んだ。
仲間と北欧のスウェーデン・ノルウェー・デンマークを旅した直後、佐伯さんがノルウェーを舞台にした小説(『ノルゲ』)を書いていることを知った。
草木染め作家の奥さんが1年間、装飾テキスタイルを学ぶためにノルウェーに留学した。そのため、向こうで一緒に暮らした。そのときの体験などが下敷きになっている。
最初に読んだのは『川筋物語』。仙台市を流れる広瀬川をさかのぼり、最後は本流・名取川河口へ戻って来るルポ風物語だ。
その物語が終わったあとに、まるで付録とでもいうかのようにノルウェーのある川の遡上記が載っていた。地球のさいはての川の話ではイメージが浮かばないので、読み残した。
北欧旅行後、『ノルゲ』を読み、『川筋物語』の「アーケルス川」も読み、さらに『まぼろしの夏その他』と『マイシーズンズ』を読んだ。
作品の主人公が「おれ」や「男」になっていても、基本的には佐伯さんの「私」の視点で書かれている。「私小説」であり、「私(し)随筆」だ。その作風に親しいものを感じてきたので、今回の記念講演にはとても興味がある。
演題は「厄災と文学」。災厄ならむろん、東日本大震災と原発事故のことだが、それを越えたものなのだろう。その話からまたいろいろ刺激を受けるにちがいない。
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