10月になって最初の朝、テレビをつけるとアナウンサーの胸の襟に赤い羽根が差してある。ニュースに登場する首相や官房長官も赤い羽根を付けていた。
「ええっ! 回覧資料が届いてないぞ」。最悪のケースが頭をよぎる。わが行政区だけそうなのか。
あるいは、届いたのにカミサンがどこかへ片づけてしまったか。いや、そんなことはあるはずがない。
念のために居間や店、帳場などを見て回る。それらしい宅配物は、しかしどこにもなかった。いよいよ不安が募る。
こうなったら、役所に確認しなくては――。といっても、1日は土曜日だ。じりじりしながら月曜日まで待って、朝一番で役所に電話した。
「10日付になります」。ひとまず安心すると同時に、釈然としない思いがわいた。共同募金会の都合で遅れているのかよ――。
赤い羽根と歳末たすけあいの共同募金は、街角で行われるわけではない。あれは、いうならば事業PRのイベントだ。
実際には、隣組を通じて協力を仰ぐ。これまでだと、9月後半には回覧網を通じて協力のお願いをし、10月後半には善意を集約するという流れでやってきた。
そのための回覧チラシや芳名簿、領収書、そして赤い羽根が共同募金会から行政区長(あるいは行政嘱託員)のもとに届く。
届いたあとがまたひと手間も、ふた手間もかかる。区長は所定の封筒と芳名簿に区名のゴム印を押し、班(隣組)の番号を書き込む。領収書にも同じように区名と区長名のゴム印を押し、班の番号を書き加える。
それから隣組の世帯数ごとに赤い羽根をそろえ、同募金会の資料とは別に、区独自の回覧資料をつくって添付する。そうしないと、班長さんによっては締め切りが遅れる場合があるからだ。
回覧資料は毎月1、10、20日に配る。10月1日に赤い羽根を胸に付けるためには、協力文書一式を遅くとも9月20日に配らないといけない。
ところが、去年(2021年)は配布が10月1日になり、今年はさらに同10日にずれ込んだ。
封入作業はカミサンに協力してもらう。赤い羽根の振り分けがけっこう疲れるらしい。「誰も付けてないのに、いつまで羽根を配るんだろうね」
カミサンの頭の中には、羽根ではなく、シールの赤い羽根のイメージが刻印されている。令和元(2019)年がそうだった。「赤い羽根に使用する原材料(羽根)の確保が困難な状況」になったため、ステッカー(シール)に切り替わった。
シールだと針で指をチクッとやることもない。作業も早くすむ。政治家とテレビのアナウンサー以外はめったに見なくなった赤い羽根だ。そろそろシールにしてもいいのでは――なんて考えるのは私だけだろうか。
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