2022年11月28日月曜日

川を思考の軸にする

  わが生活圏を流れる夏井川は、水源がふるさとの大滝根山(1193メートル)だ。同山は南北に連なる阿武隈高地の最高峰でもある。

 ふるさとは大滝根山の北西側、阿武隈川の支流・大滝根川沿いにある。夏井川はその反対、南東側から太平洋に向かって流れ出す。

 夏井川が大滝根山を水源にしていると知ったのは30代前半。この川はふるさとと今住んでいる場所をつなぐ「紐帯(ちゅうたい)」ではないか――。以来、職場への行き帰り、夏井川に架かる橋を渡るたびにチラッと川面を見やる(40年以上たった今もそれは続いている)。

その後、夏井川の上流、小野町にあっては最下流に関東で焼却したごみの主灰などを埋め立てる一般廃棄物最終処分場が建設された。

水環境に危機感をもついわき市民が立ち上がり、反対運動を起こしたが、建設にストップはかけられなかった。それどころか、後年、増設問題が起きた。

このとき、水環境を守るには、行政的な「地域」ではなく、降った雨が合流する「流域」の視点をもたねばならないことを、下流域の住民は学んだ。

水環境だけではない。令和元(2019)年10月12~13日、台風がいわき市を直撃し、好間川・新川を含む夏井川水系に大きな被害をもたらした。

この「令和元年東日本台風」を契機に、防災面でも「ワンリバー・ワンコミュニティ」という視点が求められるようになった。

「ワンリバー・ワンコミュニティ」は、シャプラニール=市民による海外協力の会が打ち出した考えでもある。

シャプラニールはバングラデシュとネパールで支援活動を展開している。その一つが洪水被害を減らすための取り組みだ。

川を軸にした流域でみれば、上流も下流も同じ運命共同体。同じコミュニティの仲間として向き合う意識を――というところから始まった。

 で、最近ではウクライナに対するロシアの侵略戦争を、ドニプロ川を軸にしてみるようになった。

戦国時代を経て、徳川幕府が開かれたあと、磐城平藩(親藩)は北の伊達藩(外様)に対峙する「とりで」になった。それで、平城下の東、夏井川には橋が架けられなかった。

川は、人と物とが行き交う交通路だが、領土を分割する境界でもある。ロシアとウクライナの戦線の一つが、へルソン州を流れるドニプロ川だという。

ロシアは同州を一方的に占領したが、現在は左岸域に撤退した。右岸域はウクライナが奪還した。

どこがどうなっているのか、とりあえずグーグルアースと組み合わせて状況を確認するようにしている。

なかでも蛇が大きなえものを飲み込んだようにふくらんだ先、急に細くなったところ(カホフカ水力発電所?)=写真(グーグルアース)=から上流左岸にザポリージャ原発がある。これがいつも気になる。東電福島第一原発の二の舞にならぬよう、それだけを念じながらニュースを見ている。

0 件のコメント: