2022年11月9日水曜日

巨大な「お頭」

        
 毎週日曜日、いつもの魚屋さんへカツオの刺し身を買いに行く。早ければ10月下旬、遅くても11月初旬には「すみません、カツオは終わりです」となる。以前はそれでサンマの刺し身に切り替えた。

今年(2022年)はまだ黙ってマイ皿を受け取る。つまり、カツオが入荷しているということだ。

サンマは逆に意識からすっぽり消えた。地球温暖化と国際的な乱獲が庶民の食卓を直撃している。2年前から刺し身を口にしていない。

 10月最後の日曜日、なにかのきっかけでブリの話になった。関西出身のお客さんがいて、冬になると「ブリはないか」と言ってくる。「『ぶり大根』を思い出すそうです」

 カツオの刺し身にブリの刺し身をおまけで付けてくれた=写真上1。義弟を含めた3人の食卓なので、ブリは1人当たり2切れだ(5切れしかないのは、1切れ食べたところで、写真を撮らないと、と気づいたからだ)。

赤いカツ刺しと違って、ブリはピンク色をしている。にんにくわさび醤油なので、それにそのままつけて、おろした辛み大根をちょこんとのせる。大根の辛さが口中に広がって甘みが引き立つような感じがした。

ブリは冬が旬といっても、わが家ではほとんど食べない。サンマが終わると、ヒラメやタコ、イカ、メジマグロなどの刺し身を楽しむ。あくまでも試食レベルのブリ体験だった。

それから1週間後の11月6日もカツ刺しがあった。足元の発泡スチロールの箱には、巨大なマダイの頭と骨格が横たわっている。

 阿武隈の山里に住む神主さんがいわき市で沖釣りをしたら、目当てのヒラメではなく、マダイがかかった。それを三枚におろしたあとの頭と骨格だった。

 頭は人間の顔くらいに大きい。原発事故で漁が制限された。その後、試験操業が行われ、すべての海産魚介類の出荷が可能になった。この間に魚が成長して大型化したのだろうか。

 魚を三枚におろすのに、大小の違いはない。が、ここまで巨大化すると、骨が硬くなっている。出刃包丁の刃がこぼれるのではないか、と思ったそうだ。

 大きくなるのはいいことかもしれないが、「食物連鎖」の観点からすると、少々問題がある。ほかの稚魚がパクパクやられる。

今まではマダイであれ、ヒラメであれ、巨大になる前に漁獲された。それで、ほかの稚魚が育つ割合も高かった。

そんな話をしたあと、思い出したように冷蔵の商品棚を開ける。「ヒラメの粗、あります」。ありがたくいただく。

 朝、江田駅前の直売所で小野町のさんの曲がりネギを買ったばかりだ。それと粗との組み合わせが頭に浮かんだ。翌日、晩酌に合わせて粗汁=写真上2=をすする。上品な味が口内に広がる。

 ブリの刺し身も、ヒラメの粗も、そのものの味だけでなく、贈与のありがたさが加わってより美味なものになる。そういうつながりが暮らしをほんのり豊かにしてくれる。

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