人間と密着している鳥の代表はスズメだ。太古は木のうろなどに営巣したのだろうが、至る所に人間が住み始めた結果、家の軒下や瓦屋根のすき間などをすみかにして生き残る戦略をとってきたに違いない。
ツバメやアブラコウモリも人間の家を巧みに利用してきた。ところが今や、コンクリートの集合住宅や在来工法とは異なる住宅が増えて、彼らも「住宅難」にあえいでいるのではないだろうか。
たとえば、ツバメ。かつてはどの町も「ツバメのすむ町」だった。家々の軒下にツバメの巣ができた。
今は国籍不明の家、たとえば「西欧風」の家が建つ。2階建てでも1階にひさしのない建物が増えて、ツバメには住みにくい環境になった。コウモリも同じだろう。
先日、近くにある集合住宅を訪ねたら、1階の出入り口に、コウモリに注意を促す張り紙があった=写真。建物の中に入ってくるので玄関の戸をちゃんと閉めてほしい――。
別の棟の出入り口には、ツバメのイラストが張ってある。これも理由は同じ。階段に営巣すると、フン問題が発生する。
近くの夏井川まで散歩していたころは、日が沈むと青黒い空を背景に、鳥だかチョウだか分からない飛び方をする生きものに遭遇したものだ。コウモリだった。
図書館から本を借りて調べたら、アブラコウモリに関するこんな記述が目に留まった。「平地の人家付近に棲息する」「山間部とか家屋がない森林内には棲息しない」
さらに、「日中は家屋の天井裏、羽目板の裏、戸袋などに潜んでいる」「夕方まだ明るいうちから飛び出して、空き地の上、川の上などを飛びながら、飛翔している昆虫類を捕食する」「われわれが町中でよく見かけるのは、このコウモリ」とある。少なくともこれに該当する。
散歩コースだったところに、国道6号常磐バイパス(現国道6号)の終点、神谷(かべや)ランプ(本線車道への斜道)がある。
斜道に沿って照葉樹の「草野の森」が設けられ、広場の中央に「未来の風」と題した乙女のブロンズ像が立っている。
コウモリは夕方、この「草野の森」のあたりを越えて、近くの夏井川の上空へ虫を捕食しに行くようだった。
いや、それは一部で、「草野の森」から住宅街へ戻ると、コウモリが目の前までやって来て、ヒラリと方向転換をする。意外に大きい。
同じ「影絵」の比較でいえば、スズメより翼が長い。チョウならば、オオムラサキを一回り大きくした感じだった。これが薄暮時になると、何匹も中神谷の空を飛翔する。
朝晩の散歩をやめてからは、すっかりコウモリの存在を忘れていた。集合住宅の張り紙を見た瞬間、懐かしい感情と困惑する住民の様子が思い浮かんだ。
ツバメも、新しい建物に合わせて果敢に巣をかける。集合住宅でもツバメに寛容な棟がある。玄関わきの物置にフンが落ちているので、それがわかる。もう11月後半。翼を持ったこの「隣人」は、子育てを終えて暖かい国へ旅立った。
0 件のコメント:
コメントを投稿