2023年4月24日月曜日

豆腐に納豆まで

   地域社会は中央からみると末端だ。しかし、政治や行政ではなく、生活の視点に切り替えると、地域社会は時代の先端になる。そこで今、起きていることの一つがこれ――。

地域社会は隣組と、それを包括した区内会(自治会)でつながっている。それだけではない、人は大人も子どももさまざまなコミュニティと関係している。

私の場合はいわき地域学會、いわきキノコ同好会、いわき昔野菜保存会などと、カミサンもまたシャプラニール=市民による海外協力の会や国際交流協会、同級生や趣味を同じくする人々とつながっている。

 それとは別に、ものを介したつながりも暮らしの中に織り込まれている。注文した食品がコープや団体、自営業者から届く。あらかたは宅配だが、その場で注文した品物を届ける移動販売、いわゆる「御用聞き」に近いものもある。

 豆腐は後者の方だ。毎週、同じ曜日にやって来る個人商店の移動販売車から買う。運転手でもあるおばさんがわが家の戸を開けて声をかける。すると、カミサンが「豆腐3丁、油揚げ2枚」と応じる。

そのやりとりを長年、聞いているうちに私もすっかり覚えてしまった。カミサンがいないときには、私が「豆腐3丁、油揚げ2枚」を注文する。

 この週1回のルーティンが暮らしに溶け込んで何年になるだろう。近所のスーパーへまとめ買いに行っても、豆腐はカゴに入れた記憶がない。かなり前から豆腐は移動販売に頼ってきた。

その移動販売が終了することになった。高齢が理由だという。高齢ドライバーの交通事故がたびたび報じられている。それも決断の理由のひとつになったのかもしれない。

 納豆=写真=も月に1回、ボランティア団体から届く。障がいがあっても明るく元気に暮らしていける地域社会づくりを――と、市民による団体が結成された。そのいわき方部の活動資金に充てるため、値段は少し高いが宮城県のメーカーの納豆を販売している。

方部長がわが家に何軒かの分を持って来たのを、あとでカミサンがそれぞれの家に配る(アッシー君を頼まれる)。取りに来る人もいる。

 活動を始めてからすでに40年を超えるという。先日、納豆が届いた時点で、方部長から活動終了が告げられたという。

 それを知らせるチラシには、所期の目的がおおよそ達成されたこと、会員も高齢化が進んだことなどから、活動に終止符を打つことになった、とあった。

 だいぶ前から少子・高齢化の問題がいわれ、山間部では小・中学校の統廃合が進んだ。市街地でもこれらの問題が顕在化しつつある。

 豆腐の移動販売も、納豆の宅配も、人がつながっているからこそ成り立つささやかな経済だった。いろんなつながりが「高齢」を理由に、こうして一つ、また一つ消えていく。

「地域社会という時代の先端」にいるからこそ、暮らしにくさや生きにくさ、つまりは困難な状況が見えてくる。そして、その困難の要因は高齢だけではない。少子化に伴う問題もまた地域社会を直撃している。

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