ギョウジャニンニクが届いた=写真。下の息子が夏井川渓谷の隠居に泊まった翌日、旧知の消防OB氏が立ち寄って置いていったという。
ギョウジャニンニクは北海道の代表的な春の味だ。別名「アイヌネギ」。農文協の『聞き書アイヌの食事』(1992年)などで承知はしていたが、現物を見るのは初めてだ(と最初、思っていた)。
本州でも山深いところには自生する。しかし、阿武隈高地に分布するという話は聞いたことがない。近年、栽培物が流通しているというから、それかもしれない。
栽培物は収穫まで3~5年はかかるという。種をまくか、株分けをして増やすが、これも時間がかかるそうだ。
どこで、だれが育てたのだろう。そんなことを考えながら、ギョウジャニンニクについて検索を続ける。
葉は鳥の羽のように長い。根元は赤みを帯びている。これが特徴らしい。似た形状の山菜にウルイ(オオバギボウシ)がある。こちらは、茎は白い。
調理法も調べる。醤油漬けというものがある。ギョウジャニンニクをよく水で洗う。生かゆでたものを刻んで容器に入れる。醤油・みりん・酒を煮たてて冷ました調味液を加えて、冷蔵庫に一晩おくと食べられる。
ほかには、てんぷら。ゆでたギョウジャニンニクを適度な大きさに切ってキムチに和えるのもいいそうだ。
それよりなにより、まずはおひたしだ。かつお節を加え、醤油をかけて食べた。今まで経験したことのない変わった風味が口内に広がる。茎には甘みがある。歯ごたえも含めて,ニラに近いといえばいえようか。
カミサンが夜、消防OB氏にお礼の電話を入れた。奥さんの実家が川前町にある。そこで栽培しているギョウジャニンニクだという。
川前は、いわきでは山間高冷地に入る。平地よりはギョウジャニンニクの栽培に向いている。とはいっても、ギョウジャニンニクは半日陰を好む。乾燥を嫌う。それを上手に育て上げれば貴重な山菜、いや高級食材になる、そんなイメージが膨らむ。
念のために、拙ブログでギョウジャニンニクを取り上げていないか、チェックする。と、9年前の今ごろ、お福分けを食べていたことがわかった。すっかり忘れていた。そのブログの一部を要約して再掲する。
――近所に原発事故で双葉郡から避難してきた老夫婦がいた。奥さんがわが家(米屋)へ買い物に来て、いつのまにかカミサンと仲良くなった。
「これ、つくったから」と煮物や漬物を持ってくる。近くの直売所で買った野菜も持ってくる。パック入りのギョウジャニンニクも届いた。
ギョウジャニンニクの第一印象は、スズランの葉に似てるなぁ、だった。野草図鑑や山菜図鑑ではなじんでいたが、現物を見るのは初めてだ。一度は食べたいと思っていた山菜だ。
ギョウジャニンニクは、老夫婦と出会わなかったら、たぶん永久に食べられなかった。その意味では、老夫婦は新しい“口福”をもたらしてくれる隣人だった――と過去形にしたのは、今はいわきからふるさとに戻ったからだ。
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