2023年4月20日木曜日

人生の選択

                     
 もう50年以上前になる。東京からJターンをし、就職先を探しているときにいわき民報社を紹介してくれた「姉さん」がいる。

 就職が決まり、平・旧城跡にアパートが見つかると、近くの姉さんの家に、よく風呂をもらいに行った。両親ときょうだいがいた。たまに夕飯もごちそうになった。その家とはいつの間にか、家族の一員のようなつきあいが続いた。

 やがて姉さんの両親が亡くなり、きょうだいも1人、また1人と彼岸へ旅立ち、結局、いわきで顔を合わせるのは姉さんだけになった。

 ボランティア精神に富んでおり、定年退職後は公民館や施設などで語り部のような活動を続けている。

 出会ったばかりのころ、姉さんは私より5~6歳上とばかり思っていた。実際は一回りも年長だった。つまり、今は80代後半だ。

 それでも、気持ちは若々しい。時事問題などにも関心が深いので、会うといろいろ話題がころがっていく。

その姉さんから、自分の家を引き払って施設に入ると聞いたのは、この春、街でばったり会ったときだ。

 福祉施設には違いない。が、文化活動で動き回っているくらいだから、一般の介護施設ではないだろう。

 ネットで検索すると、有料老人ホームには「住宅型」や「健康型」(介護サービスの必要がない人が対象)といったものがある。

 住宅型は、食事提供や掃除・洗濯などの生活支援サービスが付いた高齢者向けの施設で、介護が必要になった場合、本人の選択によって地域の訪問介護やデイサービスなどの介護保険サービスを利用しながら、施設での生活を続けることができる、とあった。

 どのタイプかは、あえて聞かなかった。が、家を引き払うとなるとダンシャリが必要になる。後日、姉さんから電話がかかってきて、夫婦で出かけた。

 姉さんとカミサンの話を聞いていると、リサイクルに回していいもの、わが家にとどめて置いてほしいものと、ものによって愛着の度合いが異なる。

茶道具などは後者の方だった。体重計は欲しい人に回してもいいが、わが家にあるのが壊れたので、手元に置いて使うことにした。

とりあえず、車のトランクと後部座席に積めるだけ積んで持ち帰った=写真。何日かあと、また要らなくなったものを引き取りに行った。

 私も含めて人生の日暮れを生きている。いつまで元気に独り暮らしを続けられるだろう――あれこれ思いをめぐらした末の結論が施設への入居だったにちがいない。

 マイホームからマイルームへと、生活空間は劇的に変化しても、自分のしたいことは継続できるはずだ。潔いくらいに新しい暮らし方を選んだ、その強さに感服した。

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